ピアノとバレー (白布 賢二郎) 3

安心な隣 ページ45

「華原さーん。」



右からそう呼ばれた気がして、


五線譜から顔を上げる。



『川西くん。』



私を呼んだのは川西くんのようで、彼は机をがた、と私の机の隣にならべていた。



川「隣、俺。」


『そっか。よろしくね。』


川「うん。」



川西くんが隣ってなんだか安心感があるなあ、なんて考えながら前に向き直る。


すると、楽譜読んでたの？と川西くんは私の机の上を覗き込んだ。


机の上には開かれた楽譜。


机を動かし終わった私は、先程からバラードの楽譜を読んでいた。



『うん。』


川「へえー。熱心だね。」


『そうかな。』


川「うん。ていうかこれ暗号みたい。難しそう。」



暗号、？



『ふふ、暗号って。ただの音符だよ。』


川「多すぎて暗号みたいじゃん。俺こういうのドから1個ずつ数えていくよ。」


『でも初心者だと仕方ないし、それも正確だよね。』


川「・・・実は小さい頃半年だけピアノやってた。」


『ええ・・・』



つい、ふふ、と笑みが零れる。


川西くんも薄く口角が上がった。



川「菅野と白布はどこだー？」


『・・あ、芹那はあそこみたい。』



そう言って窓際の前の方の席を指差す。


芹那は周りの子たちと楽しそうに話していた。



川「おおー・・」


『楽しそうだね。』


川「・・・ねえ華原さん。」


『？』


川「菅野って誰にでも抱きついたりする？」


『誰にでも・・・？』


川「例えば・・・割と仲良い男子とか。」


『男子・・えーっと、仲良い男子との軽いスキンシップならあると思う。』


川「あー、・・」


『・・・でも抱きついたりするのは、元カレさんとかなら見たことある、かな。』


川「そっか。」


『どうかしたの・・？』


川「いや、別に。なんにもないよ。」


『そう・・・？』


川「うん。・・・あ、白布あそこじゃん。」



そう言って、川西くんは中央2列の前から2番目を指さした。



『あ、ほんとだ。』



結構、離れちゃったな・・・


できるなら、近くが良かった。



川「寂しい？」


『・・うん。少し。』



若干にやにやしてる川西くんに微笑む。



川「華原さんてほんと正直だねー。」


『？、そう？』


川「そうそう。」


『そっか・・・』



自分ではよくわからないなあ・・・



川「あ、俺よく寝るから先生来た時起こして欲しいです。」


『ふふ、わかりました。』

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