ピアノとバレー (白布 賢二郎) 2

ライン8 ページ29

『私も、聞きたいと思ってたの。』



白「あ、そ。じゃ、ちょっと俺のカバンからスマホ取って。」



『うん。』




机の上に置いたカバンから白布くんのスマホを取り出して渡し、自分のスマホも取り出す。



そして白布くんはすぐにラインを交換してくれた。



追加された“賢二郎”という文字を見て、さらに嬉しさが込み上げてくる。




『ありがとう！白布くん。』



白「別に。」



『用がなくてもラインしていい？』



白「なんでダメなの？」



『じゃあするよ？毎日するよ？』



白「毎日？」




白布くんが可笑しそうに笑う。




『あ、・・ちょっと言い過ぎたかも。』



白「ある程度にしといて。多分部活忙しいし。」



『うん！』



白「母さん来るまで寝るから。スマホ戻してもらっていい？」



『もちろん。』



白「どーも。」




白布くんのスマホを受け取って、カバンに戻す。




『あ、私外出てた方がいい？』



白「そこにいていい。」



『わ、わかった。』




白布くんが布団を被ってから向こうを向いたので、



私はカバンから“暇つぶし”を取り出した。



それは楽譜とイヤホン。



白布くんが寝ている間は譜読みをしようと思っていたのだ。



スマホにイヤホンを差し込み、耳につけてからバラード1番の楽譜を開く。



流す曲ももちろんバラード1番。



楽譜を目で追いながら、曲とシンクロさせていく。



優子さん曰く、私は絶対音感を持っているので音階はすんなりと頭に入ってくる。



だから後は鍵盤のイメージと楽譜の記号だけ。



この曲は、弾けるようにはなったが曲としてはまだまだ成ってない。



鍵盤をイメージしながら楽譜の上で指を動かし続けた。




・
・
・




ふいにスマホで時間を確認すると、



・・・えっ！？もう37分も経ってる！



白布くんのお母さん迎えに行かないと！



ベットの白布くんを見ると、ぐっすり眠っていたので、



静かに保健室を出て廊下を走った。



バラード1番、一曲で10分もかかるの忘れてた・・・



なんで時間見なかったの私！



それにここから校門までは走っても3分は確実にかかる。何故なら白鳥沢だから！



白布くんのお母さん、待たせてたらどうしよう・・・



猛烈な後悔に襲われながら、私はひたすら走った。









やっと見えてきた校門。




『はあ・・・はあ・・・』




・・・まだ、来てない。良かった。

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