ピアノとバレー (白布 賢二郎) 2

ビビッと ページ14

『・・・・・っ。』




床を跳ねたボールは二階まで飛んできて、跳ね返っていった。



・・・スパイクだよね？今の。



これ、高校生のスパイク？



・・ケタ違いすぎないかな・・・？



思わず立ってしまった鳥肌をさすりながら、スパイクの主を見る。



・・背高い。筋肉がたくましい。




誰かがナイスキー牛島！と言ってるのが聞こえる。



・・・う、牛島さんというのか・・



人を見た目で判断してはいけないとわかってるけど、



・・・・怖そう。





「牛島もう一本！」




牛島さんに再びトスが上がる。



彼は助走をはじめ、勢いよく飛んだ。



高い・・・それに綺麗。



余るほど高いジャンプに、大きく反れた背中。



叩かれたボールは指一本触れさせることなく低い音と共にコートに突き刺さる。



・・・・エース。



なんだろうなあ・・・




その後もしばらく牛島さんのプレーに見入っていると、



タイマーが鳴り、ラスト一本という合図がかかった。



1年生がモップを出してきているのを見るあたり、今日はこれで終了なのだろう。




・・・・もう終わりか・・



結局最後まで見ちゃった。



でも見てるの楽しかったな。・・・また来ようかな。




しゃがんでカバンを持ち上げ再びコートを見下ろすと、




白「・・・は？」



『あ。』




白布くんと目が合った。



白布くんはぽかーん、と私を見てから怪訝そうな顔をする。




白「なんでいんの？」



『あ、ちょっと・・・見学かな？』



白「いやなんで見g「白布手動かせ！」・・・はい。」




白布くんは注意してきた先輩を見て返事をしてから私に向き直った。




白「すぐ終わるから。ちょっと待ってて。」



『え・・・？』




私の反応は見ずに白布くんは片付けに戻っていく。



私は呆然とそれを見つめた。




・・・待ってて、って・・・



いっしょに帰るってこと・・？違うかな。



でも、今から白布くんと話せるってこと・・・





・・・心の底から、じわ、と嬉しさが滲み出てくるような、



不思議な気持ちになった。



ピアノで例えるなら、ずっと練習したコーダが仕上がった時の喜び。




私は唇をきゅっと結んでから階段に向かって歩いた。







そろ、と体育館から出て、体育館近くの電灯の下で白布くんを待つ。



夏の近づきを感じる夜の湿った涼しい風が、



火照った頬を冷やすのにちょうどよかった。









白「おまたせ。」

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