ピアノとバレー (白布 賢二郎) 2

譜読み ページ12

『・・・・うう。』




ときは放課後、練習室。



私はバラードの楽譜を前に思わず唸ってしまった。



やっと決まったショパンコンクールの課題曲は、



課題曲Aがバッハ 平均律第2集15番 フーガ



課題曲Bがショパン バラード 第1番 ト長調 作品23




予選が通れば全国大会の課題曲Aはショパン 練習曲 作品10 第5番 変ト長調 「黒鍵」



今はバラード第1番の譜読み中。




『・・・難しい。』




聴いたとき、すごく綺麗だと思って選んだけど・・・



難しいし、とにかく長い。




めげずにそのあとも黙々と読み続ける。




『やっと終わり・・・』




なんとか読みきった。



ふう、と息をつく。




・・・やっぱり優子さんに頼ろうかな。



私はピアノの鍵盤を閉じ、カバンを持って立ち上がった。



そして静かに練習室をあとにする。




そういえば私3年もブランクあるんだよね・・・



バラード1番、弾き切れるのかな。もちろん必死で練習するけれど。



この1ヶ月家でずっとっていいほど弾いてるから、



感覚は完璧に戻ったと思う。



・・・それでも、不安だ。




今、私と同世代のピアニストたちはどこまで成長したんだろう。



ものすごい遅れをとっちゃった。






外に出て、体育館の前まで歩いてきていたとき、



とん、と私の足元に何かが当たった。



・・・ボール？あ、バレーボールだ。



ボールを拾って立ち上がる。



どうしようかと思っていると、




「すいません、それウチのです・・・って華原さん？」




聞き覚えのある声が聞こえて、その声の方を向く。




『川西くん。』




そこにいたのは練習着を着た川西くんだった。




川「うん。まだ帰ってなかったんだ。」



『ピアノの練習しててね・・・あ、はいボール。」



川「ありがとう。ピアノって、文化祭で弾くってやつ？」



『知ってるの？』



川「菅野から聞いた。すごいでしょ！って言ってたよ。」



『あはは。・・・はっ、ごめん、すごい話しちゃった。部活中だよね。」



川「気にしなくていいよ。じゃ、戻るね。」



『うん、頑張って。』



川「頑張る。」




戻っていく川西くんは少し笑っていた。



・・・初めて話すまで冷たそうとか思ってたけど、



全然そんなことなかった。



優しくて、いい人。




私は川西が入っていった体育館を見る。



あの中でバレー部が・・・



白布くんもいる？




『・・・ちょっとだけ。』




私は体育館へ歩き出した。

白布くんside & 傍観→←白布くんside

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す