ピアノとバレー (白布 賢二郎) 2

意識 ページ1

『・・・・顔、真っ赤。』



駆け込んだトイレの鏡で自分の顔を確認する。



どうしよう、私、



・・・なぜか、何かに、怖くなって、



逃げ出して、きてしまった・・・



白布くん、どうして・・・。









彼が触れた耳が、



熱を帯びて・・・熱い。





白布くんは、



優しく、少し微笑んでて、



初めて見た表情に胸が高鳴って・・・・




かっこいい、って思った。









今まで・・・男の子に対してそんな風に思ったこと一度もなかったのに。




私は、・・変わった？






・・・ううん、違う。




これはきっと・・、




白布くん、だからかな。




さっきだって、この前だって、




拒否しようと思えばできたのに。




遮って、やめてって。




でも、私しなかった。




拒まなかった、白布くんを。




不思議と、嫌じゃなかったの。




彼に抱き締められるのも、触れられるのも。









・・・・君のせいだよ、白布くん。





わからないことが増える。




もっと知りたくなる。





・・・・この感情って、なに？









白布くんside




図書室から出て行く華原を俺は黙って見る。





・・・・あいつ、顔真っ赤だった。




・・・俺も人のこと言えないけど。




自分の顔に手をあてる。





『・・・っ。』




・・・・なにやってんだよ、俺。





あの時、




特に何も考えてなかった、気がする。




ただ、心の底にあったのが、




バッハに対してかピアノ対してかは分からないけど、




謎の嫉妬心。




あいつが今日ずっと音楽を聴いてたから、




目も合わなかったし・・・







あともう一つ。




単純に触れたかった。




理由とか見つからない。








はあ、とため息をつく。




・・・耳が痛くないか少し心配だったのも本当だけど。








華原の髪に触れたとき、




あいつはただ俺を見てて、




耳に触れたらだんだん顔を赤くしていくのが




・・・可愛いと思って。









触れたいと思うのも、




愛しく感じるのも、




もっと知りたいと思うのも、






俺が華原に対してある感情をもってるから。




とっくに気づいてた。









だから、



さっきの表情、嬉しかった。





これから華原が俺を、




・・・・意識したら、なんて思ってる。

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