ありがとう ページ35
『_____その12歳の冬から、私はほとんどピアノに触れてないの・・・』
白「・・・・・」
『・・・白布くん?』
白「・・・あ、いや、ごめん。・・・・そうだったんだ。」
予想外の返事だった。
私はこの話を他人にしたのは初めてだったけど、
軽く受け止めては欲しくないが、同情したように可哀想な目で見られるのは嫌だった。
だけど、白布くんは、
そうだったんだ、って。ただ、それだけ。
それだけを聞いたら軽く思ってると思うかもしれないけど、彼の表情からはそんな風にはとても考えられなかった。
『・・・うん。』
言葉が見つからず、うん、と答えてしまう。
白「でも、それは華原がピアノを弾かない理由になるわけ?」
『・・・え?』
白「たしかに、辛いと思う。でも、それこそお前のお母さんは報われないんじゃない?」
『・・・え、それは・・どういう・・・』
白「なんでお前の母さんは死を覚悟してからお前のピアノに対して厳しくなったと思ってんの。」
『どう、して・・・?』
白「多分だけど・・・自分が居なくなっても華原がピアニストになれるようにするためじゃねぇの?」
『!・・・・、』
目頭が熱くなる。
白「だから自分が持ってるものを全部教えようとしたんじゃない。」
・・そ、うなのだとしたら・・・私は、
なんで気付けなかったんだろ・・・
白「・・・俺は、多分お前の母さんはお前がピアノを続けることを願ってる・・・と思う。」
『・・・・!』
一粒の涙が頬をつたった。
・・・お母さん、本当に、・・・ごめんなさい・・
・・・私・・これから・・・
泣いているところを見られたくなくて体を背ける。
しばらくして白布くんが華原、と言った。
隣を見たとき、ぐいっと腕を引っ張られる。
ふわっと甘い匂いがした。
その瞬間その香りに包まれる。
白布くんに抱きしめられていた。
女の子みたいに綺麗な顔をしていて、細そうなのに。
服の上から感じる腕や胸板は、筋肉質で、たくましい。
男の子なんだと思った。
同時にすごく安心できた。
また泣きそうになるのを堪えて、私は言った。
『・・・白布くん、私、ピアノ弾くね。』
白「・・・・うん。きっと、大丈夫。」
耳の上から聞こえる優しく低い声。
堪えていた涙が溢れる。
彼の背中をぎゅっと掴んだ。
ありがとう、白布くん。
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おしお - それにあかりもですね・・・。あの美女2人の容姿めちゃめちゃ好きなんです・・・。 (2020年2月18日 22時) (レス) id: 12731af34f (このIDを非表示/違反報告)
おしお - はい!ハニレモ大好きです!芹那ですよね笑「那」の部分だけ変えて他はまんまモデルにしました。不快に思わせてしまったならばすみません・・・ (2020年2月18日 21時) (レス) id: 12731af34f (このIDを非表示/違反報告)
あゆ - 急ですみません。 あの、八二一レモンソーダ読まれてますか? (2019年11月9日 0時) (レス) id: d5865b86c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おしお | 作成日時:2018年10月9日 15時