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『・・・え?』




優子さんは焦った顔をしながら私を見る。





『それ、それって・・・今もですか!?大丈夫なんですか!?』



優「分からない。・・・どうしよう、もしかしたら、」



『・・・もしかしたら?』


優「・・・な、んでもないわ。」



・・その時の優子さんの顔は、見たことないくらいひきつっていた。




私たちが宮城に着いたのは夕方。



タクシーを飛ばして病院に向かった。




病院の廊下を走る。




・・・お母さん、お母さん!




ガラッ、



『お母さん!!!』







動けなかった。



目を閉じたお母さん。



心電図が示しているのは0の数字。



泣いているお姉ちゃんとお父さん。



私は力が入らなくなって床に崩れ落ちた。





優「・・・うそ、でしょ?・・・ねえ!」


優子さんが声を震わせながらそう言う。



医「5分ほど前に息を引き取られました・・・・」




・・・・やだ、やだ・・・なんで、どうして。



・・・治ると思ってたのに、元気になったら、一緒にしたいことたくさんあったのに。



・・・・もう、だめなの?ほんとに、最後、なの・・・?



・・・・・・お別れの言葉さえ言えなかった・・・・・



・・・・もう、何も、考えられない・・・。








アジア大会




今日、出るか最後まで迷った。



でも、お母さんと最後に練習した曲だから・・・



誰かに、聴いて欲しかった。



何も、聴こえない。



弾かないといけないのはこんなのじゃないのに。



頭にある楽譜どおりに指だけが動く。



お母さん・・・、



・・・私にとって、お母さんとピアノはいつもいっしょだった。



二人の間にいる時間がどれだけ幸せだったと思う?



「ピアノはあなたなの。」


「強く叩けば怒り出す。」


「優しく触れれば笑い出す。」



お母さんがピアノに触れるとき、私に触れるとき、



その手が、優しくて、暖かくて、嬉しかった。



「あかり。」



そして今は、なによりも恋しい。



・・・寂しいよ、苦しいよ。



ピアノも泣いてる。音が痛いよ。



私は、どんなピアニストになればいいの?



・・・お母さんの愛の夢が聴きたい。




・・・お母さんの笑顔が見たい。



私を・・置いていかないで。





私は弾き終わった後、泣き崩れたらしい。



それでも金賞というのが楽譜どおり弾くのが全てというコンクールの皮肉。








私はそれから3年間ピアノを遠ざけてきた。

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おしお - それにあかりもですね・・・。あの美女2人の容姿めちゃめちゃ好きなんです・・・。 (2020年2月18日 22時) (レス) id: 12731af34f (このIDを非表示/違反報告)
おしお - はい!ハニレモ大好きです!芹那ですよね笑「那」の部分だけ変えて他はまんまモデルにしました。不快に思わせてしまったならばすみません・・・ (2020年2月18日 21時) (レス) id: 12731af34f (このIDを非表示/違反報告)
あゆ - 急ですみません。 あの、八二一レモンソーダ読まれてますか? (2019年11月9日 0時) (レス) id: d5865b86c6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おしお | 作成日時:2018年10月9日 15時

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