恐怖も忘れて、踊りましょ？ (ページ2)

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カンパニーのある日【キューブ】ページ2

ある日の午後のこと。
今日は珍しくカンパニーの愚図どもが仕事をしているのか、はたまた何もしていないのか、ともかく総帥殿と上級幹部たるオレがゆったりと過ごしていた。

「……暇だな、クラン」

「そうですねェ」

暇、とは言っても仕事をしていないわけではなく、忙しいと感じないレベルの仕事量なだけ。総帥殿は、完全に何もしていないように見えるが。

「上級幹部の分際で、俺を退屈させるとは職務怠慢じゃないのか？」

「……いえ、そのようなつもりでは」

「なんだ？口答えするのか？」

総帥殿の言葉は高圧的であったが、ふざけて言っているのだというのは明らかだった。
仕方ない、と開いていたノートパソコンを閉じようとした瞬間、後ろから総帥殿が、恋人相手にやるようなノリでオレの体に手をまわした。

「ひぅッ！？」

全身をぞくりと気味の悪い感覚が襲う。総帥殿は何の悪気もないし、敵意や邪念は一切無いと分かっているはずなのに、抱きしめられると脳裏にぱちりと不気味な化け物の顔が浮かび、平気ではいられなくなってしまう。オレを押さえつける腕に耐え切れず、その両手を振り払う。

「はなッ……せ！放してください！」

「のわっ！？」

その勢いで、総帥殿が少しよろけた。

「あーびっくりした……お前、結構容赦ないな……一瞬殺されるかと思ったわ」

「申し訳ありません、総帥殿！決してそのような意図はございません！！」

「そんくらいは分かるから、な？さっきのは完全に俺が悪かったし、顔上げろ」

勢いのままに土下座していたオレが顔を上げると、総帥殿と目が合った。
総帥殿はオレの頭をぽんぽんと優しく叩き、笑顔を向けてくださった。

「驚かせてごめんな。おやつに高いチョコプリンでも買ってこさせるから」

「……お心遣い、ありがとうございます」

特に忙しくもない今日の午後。
総帥殿と美味しい菓子を食べる日々が、総帥殿の夢が果たされるその日まで続きますように。