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「とりあえずコート貰うな、ちょっと待ってて」


悪いとは思いながらも敢えてAを座らせずに着替えを用意する。

きっと座ったら動けへんくなるから、動けるうちに動いてもらおう。

「A、しんどいけど頑張ってこれに着替えてきてほしいねん。できる?」

俺の問いかけに頷いてスウェットを受け取り洗面所へ向かうA。

着替えさえしてもらえば後は何でもええわ。

スウェットに着替えてとぼとぼ洗面所から出てきたAの手を引き寝室へ向かう。


「今日はここで寝て。桐山さんには明日休むこと連絡しとくから」

「ごめん…」

弱っている分、余計に小さく見えて思わず抱きしめたくなる気持ちを抑える。

「謝らんでええって。しばらくゆっくり休み?何かあったら呼んでな」

ベッドに入ったことを確認して寝室の電気を消す。

時刻は23:00。

まだ起きてることを祈って電話をかけると1コールで出た桐山さん。

『こんな時間にどうしたん?』

これまでの経緯を軽く説明すると、”無理させてたんかぁ”と呟く。

「とりあえずAは明日全休で、俺は午前休貰ってもいいですか?ちょっと様子見ておきたくて」

『俺は全然ええけど、しげは大丈夫なん?』

「やりたくてやってることなので大丈夫っす」

『そっか、しげも無理せんようにな。また何かあったら連絡してや』

電話を終えて眠るAを確認し、起こさないようにメイク落としで顔を拭く。

化粧は落として眠らんとだめだということは、姉ちゃんのおかげで学んでいる。

「あんまり変わらんのな」

素顔は普段より少し幼く見えるくらい。

頬を撫でるとくすぐったかったのか身を捩り、その拍子に首元にネックレスが付けられているのが見えた。

首が絞まるといけないと思い、そっと外す。

部屋を出てネックレスを見ると筒タイプのもので中に何か入っている。


「星の砂…?」


中身は赤い星の砂。

それを見た瞬間、頭の中をある記憶が流れ始める。


「これは俺が渡した星の砂…?」

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作者名:浅葱 | 作成日時:2021年11月4日 20時

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