◆２０◆ side.you ページ20
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「…あのね？櫻井くん」
「なんですか？」
どうしてだろう。
博愛主義？もしくは相当なお人好しなのかな？
私のことを嫌いだって言ってたのに、優しくしてくれて。
私が困っていたら、常に気にかけて助けてくれる…＿＿＿
そんな、言葉と行動が一致してないワケ分かんない後輩。
櫻井くんに、話してみようと思ったんだ。
ずっと心に蓋をしていた、過去の苦い苦い思い出を。
「私、ずっと昔にね？当時付き合ってた彼氏に浮気されたの」
「浮気……」
「それを彼にを問い詰めたら、お前が可愛くないからだろ…って逆ギレされて」
「ひどい話ですね」
櫻井くんが眉をひそめて、不快感をあらわにする。
割り箸を握ってる手が怒りでプルプル震えてて。お箸、折れちゃいそう…。
「……でも違うの。彼の浮気相手は、華奢で、愛嬌があって…。まさに男の人が守ってあげたくなるような…そんな愛らしい女の子で。仕事一筋でプライドが高くて、可愛げのカケラもない私とは、似ても似つかない。だからこんなの、彼に浮気されても仕方がなかったんだな…って」
「はぁあ…！？なに浮気男許して自己嫌悪に陥ってんだよ！？」
「だってほんとに彼の言う通りだと思ったもん…。私が男でも、きっとあの浮気相手みたいな可愛げのある女の子を選ぶよ」
自分で言っておいて、また胸がずきんと痛んだ。
可愛い女、守ってあげたくなるような女…＿＿＿
たとえそれが、嘘で塗り固められたツクリモノだったとしても。
大抵の男は喜んでそんな女を選ぶんだ。
『お前、これ以上コイツのこと泣かせたら許さねぇからな』
あの日…＿＿＿＿＿
彼の後ろに隠れて、彼の腰に抱き着いて、ぷるぷるとウサギのように怯えて私を見上げてた浮気相手の女の子。
『ごめんなさい、コウちゃんに他に彼女がいたなんて知らなくて…』
鈴の音が鳴るような…。
か細い声でそう言う彼女に、何も言えずただその場を立ち去るしかなかった。
このままじゃ、私が悪者にされるのは目に見えていて。
『本当に、ごめんなさいっ…＿＿＿＿＿』
最後に背中に聞こえたその声に振り返ると。
勝ち誇ったような目と、にんまりと三日月みたいに意地悪く上がった口角が目の端に映って。
ぞっとした。
だけど、彼の後ろに…大事に大事にかくまわれてるその子が羨ましいとも、思った。
守られること、愛されることもまた…一つの才能なんじゃないかって。
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作者名：りま | 作成日時：2016年8月22日 7時
