◆１３◆ side.N ページ13
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会社近くの居酒屋のお座敷に通されて。
それぞれが適当に好きなとこに座ってわいわい飲み始めて数時間。
「…何さっきからぶっさいくな顔してんのよ(笑)」
俺の隣に座ってるこの爽やかイケメン、櫻井くんは
ずーっと不機嫌そうにむすっとしてて。
誰とも話さず、一人で黙々とビールを飲み続けてる。
あーあ…
せっかく櫻井くん目当ての女の子たちが周りにたくさんきてんのに。
あまりの威圧感にビビっちゃって誰も話しかけられてないじゃん(笑)
「だってAさんが………」
そう言った櫻井の視線の先には、Aと部長。
いや、正確には部長のお酌をさせられてるA…か。
「生贄にされちゃってねぇ…カワイソ」
生贄っつーのは
まあ簡単に言うと、部長のご機嫌取りに差し出される女の子のことだ。
仕事ができて、愛嬌があって、おまけに美人のAは当然ながら
めちゃくちゃ部長に気に入られてて。
こういう飲みの席では、いつも部長の隣に生贄として差し出されてる。
あー…。ほんと可哀想に。
あんな頭ツルツルで脂汗かいたオッサンのお相手なんて俺はムリだな。絶対無理。
みんなが俺と同じ憐れみの目でAのことチラチラ見てはいるけど、相手が部長なだけに誰も助けには入れないでいて。
…ごめんな、A。
明日の昼メシ奢ってやっから。
「ベタベタ触りやがってあんのハゲ親父め……」
「まあまあ。櫻井くん、顔怖いから(笑)
女の子みんな逃げちゃってるよ？」
どさくさに紛れてAの肩に腕をまわした部長を殺し屋みたいな目つきでじ…っと睨んでる櫻井くん。怖ぇ。
いつもの爽やかな笑顔はどこへ行っちまったのやら…。
「Aさん、もうかなり飲まされてる…。顔真っ赤」
「んん？そだね。アイツそんなに酒強くねぇから」
「強くないのにあんな…。無理して飲んでるんですか？」
「そりゃ部長に飲めって言われたら断われないでしょーよ」
「…………ほんっと、バカだな」
ははって笑った俺とは対象的に、眉間に深くシワを寄せてはぁって大きくため息をついた櫻井くん。
コイツほんっと…Aのこと好きだよな。
他の女には目もくれないクセに、Aのことだけはちゃんとよく見てるし。小さな変化にもよく気付く。
隣で見てても、痛いくらい好きだ〜って気持ちが伝わってきて。何だかちょっとむず痒い。
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作者名：りま | 作成日時：2016年8月22日 7時
