第15話【鬼という生き物】 ページ16
いつもの場所で昼飯食うのは、普段あまり会えないAと過ごす貴重な時間。邪魔する奴は全員俺が始末する。
「A、その手首」
「昨日の任務」
慣れたように言う彼女。もしかしたら、クラスのヤツら何人かにも言われたのかもしれない。
「鬼にやられたのか」
「
「その鬼、死んだのか」
「うん。てかスルーしないで、地味に傷つくから」
「悪ぃ、というか発音いいな」
「
「それ以上はやめろ、ウザイから」
「ヒドイ」
夜に怪我したんだろうか。今は昼間なのにまだ血が出ている。
「………心操くんはさ、鬼についてどう思ってる？」
「えっ、」
唐突に質問してくる。彼女の足元に擦り寄ってきた茶色の猫を抱っこする彼女は、悲しい表情をしていた。
「人を喰う、化け物。──前までは、そう思ってた」
「……前、までは？」
「鬼って、元は何の罪もない人間だったんだろ。殺さなかったらどんどん増殖していくけど、かといって殺すのも……アレだよな」
「………私も、同じ気持ち」
Aは虚ろな瞳でぼんやりと空を眺める。
「心操くんと同じ気持ちだったよ。鬼は人にとって有害だから、斬殺しないとダメだって。──でも、」
Aは続ける。
「ある人達に会って考えが変わったの。鬼は、とっても哀しい生き物だって。だから最近、鬼を斬るのが辛くなってきた」
「………よく頑張ったな」
ふわりと抱きしめる。その瞬間、俺のブレザーに透明な液体が滲んだ。ひっく、ひっくと嗚咽を漏らす彼女を一旦離す。彼女の目はうさぎのように真っ赤に充血していた。
「……鬼ってなんだろうな」
「………だね」
「……なぁ、A」
「何？」
俺は、お前が任務に行く夜はいつも眠れねぇ。
このまま帰ってこないんじゃないかって。
このまま鬼に喰われるんじゃねえかって。
さよならも言えずに──このまま会えなくなるんじゃないかって。
頼むから、もう鬼殺隊なんか辞めてくれよ。辛いんだろ？
お前は無個性だけど、すげぇヒーローになれるかもしれない。
ヒーローを志している無個性の子供たちに、夢を持たせてやれるんじゃねえか？
『無個性でも、ヒーローになれるよ』って。
「……やっぱり、なんでもない」
「そう？」
──なんて、口が裂けても言えないけどな。
お前にだけは、きらわれたくないから
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1005人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぴーす。(プロフ) - すいません！鬼ごっこの話なんですけど、夢主ちゃんが鬼だったら、皆を追いかける側じゃないんですか？多分、話の内容的には夢主ちゃんが逃げで皆が鬼だと思います！ (5月25日 17時) (
レス) @page11 id: 93d57c8cdc (このIDを非表示/違反報告)
ここぴ - セバスチャンは笑いましたw 応援してます (2021年5月2日 21時) (レス) id: 9f9f73557c (このIDを非表示/違反報告)
ばなな味のあくえりあす - 珠世さんが鬼になって二百年ほどで愈史郎を作る、戦国の時代の縁壱が生きていたのが約三百年前なので約百年は違うんじゃないでしょうか? (2020年5月6日 21時) (レス) id: a72f134362 (このIDを非表示/違反報告)
チャケマン - あの46話の悲鳴嶼さんって手紙を読めるんでしょうか？ (2020年4月1日 19時) (レス) id: de774af347 (このIDを非表示/違反報告)
こーちゃ - ハーレムがヤバいです(語彙力がw) (2020年3月4日 17時) (レス) id: d7ebd024c5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：音海 | 作成日時：2019年12月28日 15時
