第参話― 任務と監視 ページ11
八日経ち、ようやく煉獄殿の初めての共同任務にあたった。共同といっても、煉獄殿は側で私の戦いを見るだけだけのようであるが。私の力を試したい、とのことだが、それは前のうちにやっておくべきではないのか。私の力もわからぬまま煉獄殿は継子として受け入れることを許したのか。余計にわからなくなったが、鬼の方が優先だ。腕が鈍っていないかだけが心配ではある。
屋敷を出て半日歩き、北北西にあるという指定された町についた。商業の発達した町で、昔からの老舗も多い裕福な町だ。私もこのあたりの地名は知っていた。
「いつも通りのやり方でいい。余計なことは考えず、俺はいないものとして任務にあたるんだ」
「わかりました」
「無論、危ない状況になったら加勢しよう。なに、心配するな」
夜の寂れた町を歩きながら、いつもより幾分か声量を落として煉獄殿は言った。
視線を向けると、彼は穏やかに笑っている。これから殺伐とした鬼狩りをするというのに、どうしてこうもいつも通り振る舞えるのか。私は色々と考え事が浮かんでは止まない。
私が迷いなく真っ直ぐ道を進んでいると、煉獄殿はすごいな、と呟いた。
「先程から少しも道に迷っていない。何かを辿っている様子もないし、どうして迷いなく行けるんだ」
「……私は少し、目がいいので」
「目がいい、視力が高いのか」
「はい。集中すると、遠くても細部まではっきり見えます」
「それで、鬼を探しているのか。既に近いか、その様子だと」
「……そうですね」
正確に言えば、遠くを見ているだけではない。この町の細かな”跡”から鬼を探している。踏み固められた地、家々の細かな傷、そして、鬼の”気”。これらを見て、人の営みではつかないものを探り、鬼を見つけるのだ。特に鬼の気は黒くもたつき深い恐怖と血の色が見える。それは目印のようなものだった。
私の目の話をしている間に何度か角を曲がり、町の中心部から幾分か離れたところに、点々と血痕が散らばっていた。今回の任務で討伐対象の鬼の仕業だろう。少々引きずったような跡が残っているが、この先にいるのは間違いない。
そして七度目の角を曲がったとき、目的の鬼はいた。周りには赤い水溜りが広がり、ばしゃりと足で遊んでいる。
「ああ、こんなところにいたんですね」
「……なんだあ、お前」
鬼はゆらりと立ち上がりこちらに首を向ける。瞳孔の開ききった赤い瞳が私を睨んだ。
「あなたを殺す、鬼狩りですよ」
言い切る前に地を蹴った。
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ましろ(プロフ) - 赤眼のわかめさん» ありがとうございます!そう思っていただいて嬉しいです。自分なりにこの小説を精一杯書き上げたいと思いますので、よろしくお願いします。 (2019年6月25日 19時) (レス) id: b3ec390a2f (このIDを非表示/違反報告)
赤眼のわかめ - 作者さんの捉え方、とても好きです。読んでいて楽しいです。これからも頑張ってください! (2019年6月24日 17時) (レス) id: abeb3a86ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましろ | 作成日時:2019年6月13日 19時