孤児院のチェス ページ10
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Dorothyの過去
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ある穏やかな日。
Dorothyにはファミリーネームが無い。
それはこの日にゴミ箱へ捨てられたからだ。
元々強い力を持つ男子が欲しかった両親は
女子が生まれたと聞いて幻滅し、
Dorothyが知らないところで捨てた。
だから彼女はシスターが拾ってくれるまで
暗くじめじめした箱の中でずっと待っていた。
捨てた両親をずっと。
×××
「Dorothy、あれは来客用のベルですからね」
「Dora、髪は結い上げるか切るか致しなさい」
孤児院でたくさんものを与えられた。
彼女は飴と鞭を、また名前と服を。
彼女自身、このきっちりとした規則性が
体に染みていくのは楽しかった。
ここからだ。彼女が戦事に興味を持ったのは。
ある日シスターの妹が、Dorothyとチェス、
という盤上ゲームを持ちかけた。
ルールは即席で知る彼女に、シスターの妹は
ますます勝つ自信をつけ始めていた。
「チェックメイト、私の勝ち」
あっさりDorothyは勝った。
相手が完全に油断した、
という目で自分を眺めている。
酷く哀れなその顔よ。
Dorothyはここから、勝負に勝たないと
こんな顔を自分がするのだと思っていた。
__負けるものか。
×××
Undergroundにはリーダーなるものがいる。
そのリーダーに挑戦するのはあまりに
無謀だって知ったから、彼女はその
跡継ぎを狙って一騎討ちを所望した。
「はい、僕の勝ち」
まるであのチェスみたいだった。
敗因は嫌でも分かる。自分の魔法は
パターンというものが少ない。
「なぁ、なんで魔法のパターンが複数にある?」
「誰だってこれくらい持ってるよ。
高々消費はバカでかく無いんだからさ」
後のAmuletに言われたのが突き刺さった。
私は他の同世代より遅れていたのだ。
「__魔法を教えてくれ」
これが今の主従関係、土台の出来事。
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作者名:Patricia | 作成日時:2018年5月12日 20時