⇅IF/9,零落 ページ31
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パチン、と赤いランプ消えた手術室の中から、鮮やかな血液と赤黒い血液が服に付いた医者が出てくる。面持ちはよくない。ドクンドクン、と頭にまで響く鼓動が鬱陶しくて仕方ない。
「最前を尽くしましたが、」
その後は医者の声はよく聞こえず、脳に直接稲妻が走るように頭の中が閃光と轟音に侵された、いや聞くことを望まなかった。医者はそうして頭を下げてからオレの前を通り過ぎていく。それと同時に、Aの顔がオレに向けた感情の機微を走馬灯のように脳裏をかけていく。それは一瞬だった。当たり前だった、オレはAとたった2年だけの関係だった。
「はは、はえーな…」
こんなことになるなら、元よりオレに縛りつけて
「オレが何も出来ないせいでまた殺すんだな」
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心拍数も低くなっていて、血色の悪くなった肌ともうほとんど冷たく感じられる体温。もう永くない、と嫌という程思い知らされる。深い呼吸はそのままいつその活動をやめてしまうのかと見ているのも苦痛だった。
「…ここのいさ、ん」
ふと消え入りそうな声が鼓膜を擽った。すぐに顔を上げて顔を見れば、薄く瞼が開いていた。鈍器で殴られて痣のついた腕がぴく、と動いて指先がオレの方に動く。その手をすぐ手を重ねて、体温を取り戻させるように握った。Aが震える手で呼吸器を外した。
「クリスマスイヴ、ですね、…会えてうれしい、私やっぱり九井さんが大好きで…会えたらって思ってたんです」
「ごめん、ごめんA、遅くなってごめんな、」
ゆっくりと瞬きをしながら、全て分かっているとでもいうような微笑みでオレの顔に手を伸ばした。オレはすぐに背中を支えてやってその手を受け入れると、細く温かさを失いかけた手が頬を伝う涙を指で撫でた。
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m(プロフ) - 初コメント失礼します。本当に素晴らしいお話でした。完結前に出会えなかったことは悔しいですが、本当に大好きな作品になりました。人間的なストーリーで心が引き込まれ、感動しました。この作品を作っていただき、残していただき、本当にありがとうございます。 (2023年2月19日 12時) (レス) @page33 id: 0d9b393e0f (このIDを非表示/違反報告)
推しが尊い - 思わず涙がこぼれてしまいました、、、。切ないしもうなんかよかったです。私もテストヤバイ、、、、、 (2021年11月30日 1時) (レス) @page33 id: 11fe216a38 (このIDを非表示/違反報告)
パチンカスヱ(プロフ) - セツナさん» 読んでくださる方々のおかげで無事完結出来ました🥰感動していただけたんですか…めちゃくちゃ嬉しいです🥺❣️こちらこそ最後までお付き合い頂きありがとうございました❕ (2021年11月29日 16時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
パチンカスヱ(プロフ) - 楸さん» あええ大好きなんて悶えます…🤦♀️私もちょっと寂しいなって思ったりしているのでまたココくんの作品書きたいと思ってます❣️頑張ります!!最後まで読んでくれてありがとうございました🤍 (2021年11月29日 16時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
パチンカスヱ(プロフ) - アオさん» 完結までお付き合い頂きありがとうございました!!バンドエンドもいかがだったでしょうか…😌喜んでいただけていたら嬉しいです! (2021年11月29日 16時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:パチンカスヱ x他1人 | 作成日時:2021年11月12日 0時