仕事 ページ8
見た目からしてかなりの重みを感じていたが、実際に持ってみると思っていたよりも重かったりする。
かろうじて渡された機材を抱え込むと、すたすたと校舎の中へ入っていく渋谷氏のあとを慌てて追いかけた。
────見た目貧弱そうなのに、なんで何ともなさそうなんだ!!
アタシは心の中でそう思った。
背はすらっと高くて細身の体、着ている服が真っ黒なために余計際立つ肌の白さ。
今日ようやっと日の元に出てきましたよーと言われても何ら不自然じゃないその佇まいに、ただただ感心するばかりだった。
まあ背が高いと感じるのはたぶんアタシがちっちゃいからだな。なんてったって麻衣より低いもんな。うん。
……かなしー。
正面の階段を上がりすぐ近くの教室に機材を置く。
ここへ全部運び込む、ということなのかな。
「棚を組み立ててくれ。僕は機材を持ってくる」
言うや否や渋谷氏は姿を消してしまった。
はっや……。
ふたり教室に取り残された、アタシと麻衣。
昨日の怪談をふと思い出してしまう。
そういえば何だかあちこちがきしきしいっているような気がする。建物が建物だしただの家鳴りなんだろうけど、急に背筋が寒くなってきた。
背後から足音が聞こえたような気がして恐る恐るドアの方を振り返ると、
真っ白な手が覗いていた────。
「何を呆けている。さっさと仕事しろ」
直後そんな冷たい声が聞こえてきて、なんだか妙に安心した。
なんだ、渋谷さんか……。心臓にわるいよぉ。
さっさとしないと怒られると思い再び棚の方へ体を向けると、隣で作業をしていた麻衣がなにやら怖い形相でぶつぶつ呟いていた。
「嫌いだ、あんなやつ……!」
それだけなんか聞き取れて、思わずアタシは吹き出してしまった。
棚に機材をすべて並べ、該当の場所に機材をセッティングし、すべての教室の気温を測ってその日は終了した。
そして肩の荷が降りた気分で帰ろうとしたその去り際。
「明日もよろしく」
……ですよねー。
明日もかあ……。
いっそ今日は泣かせてほしい。
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作者名:椎名羽流 | 作成日時:2017年12月13日 0時