呼出 ページ34
麻衣はうつむいて何かをいいかけたけど、すぐに口を閉ざしてしまった。
それきり、アタシたちはしばらく話さなかった。そのときだった。
『一年、谷山麻衣さん、至急事務室までお願いします。繰り返します────』
校内アナウンスがそう告げた。
アタシと麻衣は顔を見合わせた。
呼ばれたのは麻衣だけだったみたいだけど結局アタシも事務室までついていった。
コンコン、と受付の窓を叩いてやると事務のお姉さんが窓を開けてくれた。
「電話が入ってます。……あら、あなたは?」
「ただの付き添いです」
電話?誰からだろう。
学校にわざわざ連絡をよこすような人物に思い当たるのがいなくて、麻衣はおそるおそる受話器を取り上げた。
「もしもし?」
『麻衣か?』
その声は、アタシの耳にも届いた。
麻衣は言葉を失ったように、放心して何もいえないでいた。
『麻衣?』
「そ、そう!そうです!」
『怒鳴らなくても聞こえる』
ナルだ。ナルからの電話だった。
アタシも麻衣も思わず手を取り合ってしまった。
でも、なんでナルから電話なんか?
「どうしたの?」
『ギャランティ』
「……はあ?」
『だから、助手をやってくれた給料。いらないのなら、べつにいいが』
なんとも事務的な用事だった。というか、こんな話事務員さんの前でしちゃって大丈夫なんだろうか?アタシに聞こえるってことはあのお姉さんにも聞こえるよね。
そう思って視線を向けてみたら、受付の窓は電話のコードだけを通して閉められていた。しかも、間の良いことにお姉さんはすこし席を離れて向こうで探し物をしている。
……なんとも、まあ。
「くれるもんなら、もちろんいただきますとも」
『では、一週間以内に郵送する。────それと、麻衣?』
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作者名:椎名羽流 | 作成日時:2017年12月13日 0時