収束 ページ30
事件もようやく片が付いて、アタシ達は帰る準備を始めた。
手伝おうとするとナルがあんまりいい顔をしなかったけど、短い間だったとはいえボスだったわけだし、助手としてここまではさせてほしい。
そんなアタシ達のそばでは無能二人組が、
「なーんか大した事件じゃなかったわねえ」
「そのワリにゃ、ビビってなかったか?」
「ちょっと、冗談やめてよね」
なーんて他愛もないやりとりをしていた。事件の最中でも事後でも、変わらないこの感じ。
なんだかある意味羨ましいや……。
当のアタシはというと、胸の中が何とも言えないような虚無感に覆われているような気がしていた。
所詮、麻衣とアタシは代理助手。本当の助手さんが戻ってきたんだから、アタシ達はもうただの女生徒でしかない。
これが終わると、もうナルとは二度と会えないかもしれないんだ……。
「授業に戻らないんだったら、機材の撤収を手伝ってくれ」
「はいはい、やってますやってますぅー」
もどかしい気持ちを噛み殺すように、アタシは投げやりにナルに言葉を向けた。
どうせあいつは、アタシ達がいなくなることなんて、何とも思っていやしない。機材の弁償のため、だとか、足りない助手の代理、だとか、所詮そんなふうにしか見られていないんだ。
……なんだか、寂しいな。
アタシだけの一方通行な気がして、いや絶対にそうなんだ。
相変わらず淡々と作業をこなすナルの背中を見つめながら、アタシはぼんやりとそんなことを思っていた。
片付けが終わると、がらんどうになった実験室がなんだか物寂しげな空気を醸し出していた。
そりゃそーだろうなー。ちょっと前まであんなにたくさん機材があったのに、それが一辺になくなっちゃうんだもん。
お前も寂しいか、そうかぁ……。
なんて変なことを心で呟きながら引き戸の木枠をぽんぽん叩いていると、最後のコードを抱えたナルが「もう授業に戻っていいぞ」と声を掛けた。
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作者名:椎名羽流 | 作成日時:2017年12月13日 0時