事故 ページ3
ドミノ倒しになったボロボロの靴箱。
頭上で木くずがぱらぱらと舞い落ちる音がしてアタシは我に返った。
そうだ、麻衣は!?
「麻衣!!」
「なにー?」
なんとも能天気な声が返ってきた。
そんな麻衣にがっくりしたけど、何より無事そうなことに心底ほっとした。
「だ、大丈夫……?」
「うん、あたしは全然。ただ……」
「ただ?」
麻衣が決まり悪そうな顔をして振り返った背後。
そこには大小形様々な瓦礫(もとい、木くずの山)が倒れた靴箱にもかぶさるように積まれていた。
────その視線の先。
「さっきの人が………」
「あっ……」
その言葉にアタシは全てを悟った。
かがみ込もうとしたとき、不意に背中に衝撃を感じたのだ。
そして倒れてくる靴箱よりもやや離れた場所へ弾かれ、アタシは難を逃れた。
そのときアタシを突き飛ばしたのはおそらく彼だったのだろう。
答えを求めるように麻衣を見ると頷いたので、恐らく麻衣も同じように助けられたのだろう。
「だ、大丈夫ですか!?」
「どうした」
麻衣が声をかけたのと同時に別の声がした。
振り返ると、そこにはアタシ達が昨日出会った少年が立っていた。
「……何があった?」
「え、えっと……!」
急に声をかけられてたじたじしているアタシを他所に、麻衣はどういうわけか落ち着いたように状況を説明していた。
けれどびっくりしたのは麻衣も同じようで、
「あの、すみません!あたし、びっくr」
「言い訳はいい」
あたふた喋っているところ少年は見事にすっぱりと麻衣の言葉を遮った。
麻衣はそんな彼の態度に唖然としていた。
麻衣の気持ちはいざ知らず、少年はアタシの方へ視線を向けた。
その眼は心なしか麻衣に向けられたものより優しく見えた。
────もちろんそんなはずもなく。
「言い訳より……」
「このあたりに医者は?」
「そっちから支えてくれ」
少年がアタシに向かってあれこれ注文をつける。
言われるがままに彼の知り合いと思われる、怪我をさせてしまった男性に肩を貸そうとしたならば。
「結構です」
ぱしっとたった一言で断られてしまった。
あっちゃー……、こりゃとんでもないことをしてしまったのだなアタシ達は。
助けを求めるように麻衣を振り返るとアタシに対する彼の言葉に更に腹を立てたのか、顔が怒りに満ちていた。
…………おぉ、こわーい。
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作者名:椎名羽流 | 作成日時:2017年12月13日 0時