劣等 ページ17
麻衣に校舎を出よっか、と促すと麻衣は難しい顔をして背中のあたりに手を伸ばした。
「なんかイガイガすんだよね」
「えっそれやばいじゃん……ガラスが残ってんじゃない?」
あの時主に被害を被ったのは黒田さんだったけど、実は麻衣も飛び散ったガラスを受けていた。
多分それが背中の中に入って残っているんだろう。
麻衣はちょっと見てくるね、というとどこかへパタパタと走り去っていった。
後にはアタシとジョンが残される。
「麻衣はすごいよなあ」
だれに言うわけでもなく、アタシはそう呟いた。ジョンが不思議そうにアタシの顔を伺った。
「麻衣さんが、ですか?」
「うん。アタシにはできないことをさらっとやってのけちゃうじゃん?アタシなんてナルが居なくなったら結局何にもできないんだもん」
そう自虐的に笑った。
麻衣は結構単純で真っ直ぐだから、気に食わないことがあったらすぐに食ってかかる。
麻衣にとってナル自体がそもそも気に食わないやつの塊だから、アタシと比べればすごくよく接していると思うんだ。
たとえそれがあんまり気持ちの良くないことだったとしても、アタシにはそれが少し羨ましかった。
「Aさんもそんなことないんとちゃいまっか?」
アタシの話を聞いていたジョンが、ふとそんなことを口にした。
「え?」
「AさんかてAさんなりによくやってるやと思います。そりゃ僕らや渋谷さんと比べればできることは少ないかもですけど、自分で『これはできる!』と思ったことはちゃんとやってはりますやろ?校舎にレコーダーを残そうと最初に言うたのも、Aさんやないですか」
ジョンはアタシを励ましてくれてるのかな。
確かに初めにレコーダーを置こうと言ったのはアタシだ。本当はカメラが良かったけど、使い方がよくわからなくて諦めた。設置をしたのは麻衣とジョンだけど。
でもジョンのその言葉でアタシは少し元気が出た。
もう、ナルが居ないからってくよくよするのはやめよう。
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作者名:椎名羽流 | 作成日時:2017年12月13日 0時