Ep.3-1 ページ9
Side.目黒
康二が、トイレに行ってから中々帰って来ない。
阿部ちゃんが遅くない？と言うから余計に気になってしまい席を立つ。
「俺、見てきます」
店の奥にある狭めの通路で、康二と女の人の声が聞こえてくる。
あいつ何やってんの。
覗くとまさかのAさん。
尚更何やってんの。
2人で楽しそうに談笑している。
声をかけると、状況の説明をする康二。
そんな彼を尻目にAさんに近づく。
近づく度に心臓の鼓動が速くなる。
Aさんからは戸惑いに少しの恐怖が伝わってくる。
帽子とマスクをとって声を絞り出す。
俺の顔を見た彼女は、驚いていた。
『ひ、久しぶりだね。目黒くん』
そう返される返事。
この声、どんなに生で聞きたかったか。
早く声をかけておけば良かった。
「後でAさんのところに行っていい？」
俺のその問いに彼女は笑ってもちろんだよ〜と答えてくれた。
1人状況を把握しきれていない康二を連れて席に戻った。
岩「お前ら遅すぎじゃない？」
席に戻ると各々から康二に対する心配の言葉や文句を言う。
向「ちゃうねんて、めめが女の子ナンパし始めて…」
「語弊があるから、違うから」
向「でもさっき席行っていい？とか言うてやん！」
気がつくと全員の視線が俺に注がれていた。
「なんすか」
阿「いや、その子と知り合いなの？」
渡「もしかしてずっと見てた子？」
コクンと頷くと佐久間くんがどの子！？と店内を見始める。
渡「お前、そんなにキモかったけ？笑」
「しょっぴーうるさい」
そんなからかい方をされていると、
テーブルのはじの席に座っていた阿部ちゃんに控えめに声をかけられる。
阿「どうしました？」
『目黒くんにこれ渡していただけたら嬉しいです。』
ちらっと横目でその人物を確認すると、まさかのAさん。
そういうのはと断ろうと紙をAさんへ返そうとするその手を止める。
「阿部ちゃん、大丈夫。Aさんこの紙…」
『私の連絡先。成人式の時聞きそびれちゃったから』
覚えていてくれたんだ。
嬉しすぎてニヤける。
佐「めめ、ニヤけてる」
「佐久間くん、黙って」
後ろから茶化してくる佐久間くんを無視して、お礼を言う。
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作者名：Emma | 作成日時：2023年2月3日 10時
