リナリアの意味【黒】 (ページ32)

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Ep.7-4 ページ32

Side.目黒

思ったより早く仕事が終わり、時間を潰しても早く公園に着いてしまったので、ベンチに腰掛ける。

目【早く着いたから、ここにいるね】

写真を撮って、Aちゃんに送る。
すぐさま既読がついて、OKとスタンプが送られてきた。

明後日から、ダンスにボーカルレッスン、
レコーディングなどデビューにむけてやっていくことがたくさんある。

今日のタイミングで会えて良かったのかもと、音楽を聴いてると肩を叩かれる。

『おまたせ』

聞こえなくても口の形でわかる。
イヤホンを外し、大丈夫と伝える。

「ふはっ、何その袋」

Aちゃんはパンパンになっている袋を持っていて、
中身を次々ベンチに出していく。

『これは、おつまみ。これはお酒だけど、公園じゃ飲めないね。看板に書いてあった』

「もしかして、少し酔ってる？どこかで飲んでたの？」

『うん、お友達と居酒屋で。でもほんの少しだから大丈夫だよ』

「とりあえず、隣くれば？」

『あ！待って・・・これ！見て！』

Aちゃんが仕事用と思われる大きめのバックから取り出したのは、俺のジャンボうちわだった。
自分の顔を隠し、良いでしょー！と言う彼女。

「え待って、何で持ってるの？笑」

『頼んだの、買ってきてって。毎朝おはようって話しかける』

「キモいからやめて笑」

『気持ち悪くないよ、失礼な』

彼女との会話は素の自分に自然と戻れていて、時間が過ぎるのが本当に早い。
時計を見れば、日を越していた。

「帰りどうすんの？」

『適当に、ネカフェでも行こうかなと』

「なら俺んち来ない？その重たそうな酒も飲めるし」

『家に行くのは〜うーん』

「うち来て、ね？」

渋っている彼女の顔を覗き込み、優しく聞くとちいさく『うん』と言った。
勢いで誘ってしまったけどど、好きな子が家に来るとか多分俺の方が余裕ない。

アプエでタクシーを呼び、運転手に住所を告げる。
車内ではすごく静かなAちゃん。
これって意識してくれてるってことで合ってるよな・・・？

『あ！大変申し訳ないんだけど。メイク落としだけコンビニで買っていって良いかな？』

そう俺に良い、運転手に目的地から近いコンビニに降ろしてくださいと伝えている。
コンビニに到着し、降りようとすると扉を閉められた。

「え？」

ガラスの向こうの彼女を見るとスマホを指差していた。

【先に行ってて、住所送って。ごめんね】

言われた通り、先に家に行くことにした。