リナリアの意味【黒】 (ページ3)

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Ep.1-2 ページ3

Side.目黒

丸テーブルの席に置かれた自分の名前。
周りを見渡せば、少し見られている気もする。
席につき、開始まで10分を切ったところで小走りでAさんが隣に座ってくる。

ふわっと甘い香りを髪からさせる彼女は、
中学校の頃とは雰囲気がまるで変わっていて記憶の仲の彼女とは違っていた。

『ギリギリでみんな来すぎ。笑』

「受付、お疲れ」

ありがとーなんて言いながらスマホで時間を確認しているその横顔に見惚れてしまう。
スッと伸びた鼻筋とか、長いまつ毛とか、薄い唇とか14歳の時に好きだったままだ。

当たり障りのことしか言わない市長の話を聞いて、式は無事に終わった。
このあとはこのまま会食なわけで、まだ一緒にいられるとか思うと嬉しくなる。

『やっと終わったねー！この後の食事会出るでしょ？多分席もこのままだからお話ししよ』

「うん。Aさんがいるなら、いようかな」

うん！と笑顔で返事をしてくれる。
先生に挨拶してくると席を離れていった。

1人なるとやはり周りの目が気になる、話しかけてくるわけでもないこの気まずい目線。
腫れ物を触るかの視線。

5分ほどしてAさんが戻ってきた。
改めて見ると、黒に緑の花があしらわれている振り袖を着ていた。
髪のもあの頃とは違い長くて綺麗にセットされている。

『ごめんごめん、はいこれあげる』

スッと目の前に出されたのは暖かいお茶。
お礼を言い受け取って一口喉に流し込む。

「変わってないね、Aさん」

『そう？目黒くんも変わってないね、久しぶりだね。元気してた？』

「うん、元気だよ。Aさんは？」

『私も元気だよ。今目黒くんは何してるの？』

その質問に少し言葉が喉に詰まる。
今の自分の現状を少しオブラートに包んで話す。
この歳になり周りに現状を話すのが辛くなってきた、
いつものように腫れ物を触るかのような言葉が返ってくるかと思っていた。