リナリアの意味【黒】 (ページ19)

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Ep.5-2 ページ19

Side.目黒

康二とよく行く古着屋に入り、土曜に着て行く服を選んでいく。
いつもより真剣な俺を見て何かを察した康二。

向「もしかしてめめ、デート？？？？」

「………」

向「ちょっと無視せんといてよ！どこ行くん？」

「動物園？」

向「ええやん！動きさすい服がええよな、これとかどお？」

康二は何着候補を出してくれて、スタッフさんに試着お願いしますと声をかけてくれる。
何着か購入し、写真を撮ってAさんに送った。

夜飯を済ませ、康二と別れる。
スマホを見ると自分の送ったトークで会話が終了している。
あんま、返事返さないタイプなのかなAさん。

佐久間くんに言われた、意識されてないって言葉を思い出す。
いやその通りだと思うんだけど、どうしたらこっちを向いてくれんだろうか。

その瞬間、スマホに着信が入る。
発信者の名前を見て、全てがどうでもよくなる。

「もしもし」

『目黒くん？』

「うん、目黒くん」

『いきなり電話ごめんね。誰かと話したくなっちゃって。』

「ううん。Aさんさぁ、名前」

『ん？名前が何ーー？』

一呼吸おいて喉から声を絞り出す。
彼女を相手にすると全てのことが初めてのように緊張してしまう。

「名前、Aちゃんて呼んでいい？」

そう言った言葉の返事が20秒ほど経っても返ってこない。
もしかして切れた？と画面を確認しても通話中の画面だ。

「もしもし？聞こえてる？」

『…大丈夫！聞こえてるよ。全然名前で呼んでも良いよ〜！！』

いつもと変わらない声色。
やっぱ、脈ねえのかなとか胸が苦しくなる。

「じゃ、俺のことも蓮で」

『目黒くんは、目黒くんだよ』

「ふはっ、なんでよ。俺も名前で呼んで欲しい」

『んーー、気が向いたらね笑』

いつも気がつくとA田ちゃんのペースになっている事に気づく。
調子が狂うけど、嫌じゃない。

「呼んでくれるの待ってるから笑」

もう家ついちゃったと言う彼女に「またね、おやすみ」と伝えて通話を切る。
俺を意識して欲しい。それはもうめちゃくちゃに。
恋愛ってこんなに難ししいとか知らない。