PARACAGE 9th【ars】 (ページ10)

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290.カクシゴト。ページ10

触れるだけだったそれは、その内に熱を持つ。

雅紀くんの体重が私の身体に掛かって、ソファに背中を押しつけられた。
両手で頬を包まれたまま、彼の舌に口内を撫ぜられる。

その合間に、彼は囁くように話す。

「...俺がAちゃんを抱けなかったのって、悩んでたからなの」
「......」
「この子にあんなコトしてもいいのかな...って」
「......」
「Aちゃんの気持ちも、よく分かんなかったから」

軽くキスをして「でも、もう抱かない理由って無いよね」なんて少し笑いを含んだ声。

「抱く理由ならあるけど」

唇が首筋に下りる。
それだけで、全身が粟立つ。

「...ちょ...ちょっと待って...！」
「ん？」
「これ以上は...」

冷静になって、私！
ここどこ！？リビング！！全員家に居る！！！

「フフッ、いくら俺でもこんなトコで暴走しないよ」
「え...」
「何されると思ったの？」

たった今、抱くとか言ったじゃないですか！

「またソレは今度ゆっくり、ね」
「......」
「こんないつ誰が入って来るか分かんないトコではさすがに」
「......」
「え？Aちゃん、そんな方が好き？」

ビックリだけど、雅紀くんは大真面目に訊いて来てる。
そんなワケあるかい！って突っ込みたいんだけど、凄い至近距離にあの顔があるとそんな気力は出て来ない。所詮私は恋する乙女。乙女とか自分で言ってる、イタい。

「あ...そうだ、あのね」

雅紀くんが私を抱き起こしながら話す。

「ショーに出て欲しいって、依頼されたの。アキラに」
「...ショー...」
「インタビュー終わってスタッフ達と食事会があったんだけど、その時に『モデルとして参加して欲しい』って言われて」
「うん」
「でも、Aちゃんが嫌なら断るから」
「え？」

彼はそれを当然のように言った。
私が嫌ならやらない、と。

「...雅紀くん、ちょっと待ってて？」
「え？何？」

私はリビングを出て、二階へ上がり自分の部屋へ。
一つ息をして、メンストを何冊か抱えてリビングへ戻った。
彼の隣に座ると、雅紀くんは「メンスト？」って不思議そうな顔。
私は何も言わず、それを手渡した。

「どうしたの？これ。結構前のもあるね、ニノちゃんから借りたの？」

その中には、私が咲くんに堕ちたあの写真が表紙の物もある。

「それ全部、私の。部屋にはまだまだある」
「え？」
「私、...雅紀くんに隠し事してる」
「カクシゴト...」

雅紀くんが、私とメンストを交互に見ながら首を傾げた。