PARACAGE 9th【ars】 (ページ27)

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307.行く末。ページ27

頭を抱え込まれるように抱きしめられて、子供に戻ったような気持ち。
ドキドキするのに、安心する。

「ねぇ、雅紀くん」
「んー？」
「モデルさん辞めてから、どうするの？」

暫くはお休みするのかな。
ずっと忙しい人だったから、それも良い気がする。

「前に働いてた会社に戻る事になったよ」
「えっ？前の会社...って」

それって...

「ニノくんと同じ会社？」

雅紀くんの腰に手を回したまま彼を見上げると「わー上目遣い可愛い」って言われて、ペッタンコのお腹をペシっと叩く。

「アハハッ！褒めたのに叩かれた」
「もう、そーゆーの良いから！」
「フフッ、そーだよ。ニノちゃんの会社」
「じゃあニノくんも雅紀くんがモデル辞める事、知ってるの？」
「ううん、ニノちゃん頼るのは違うと思ったから自分で会社にお願いしたし。だからニノちゃんにはまだ話してない」

雅紀くんがプニプニと私のほっぺたを人差し指でつつきながら話す。
真面目な話をしてるはずなのに、どうにも甘ったるい。ニヤニヤしそうになる。

「ニノちゃん、嫌がるだろーなー！また俺と一緒の会社になるの」

タハーッて笑った彼が可愛くて、こっちが嫌になる。
ニノくんの言う『嫌だ』とは全然違うだろうけど。

「モデルはね、やりたいからって出来る仕事じゃない。やりたくても出来ない人が、たくさん居る仕事だから」
「うん」
「だからすっごい有難いと思ってたし、手を抜かずにやってた。でもね、俺が自分からやりたいと思った仕事ってプレスだったなぁ…って」
「...うん」
「モデル辞めようって考え始めた時にそれ思い出して、前の会社に『面接してください！』って直談判したの」

ストンと雅紀くんがしゃがんで、今まで見上げる所にあった彼の顔を今度は見下ろす。
雅紀くんの方が上目遣いになってる。

「上司もビックリしてたけどね、モデルのキャリア捨てるのか？勿体無いぞ？って」
「...その意見も、間違ってないもんね」
「でも、何を勿体無いと思うかは自分の価値観だからね。それに『咲』の俺が培った事は何も無駄じゃないし」
「うん」
「Aちゃんと出逢う前から俺の事、知って貰えたし」

下から掬い上げるように、軽くキスをされた。
不意打ちに少し怯むと、動けないように両手を掴まれた。

「ねぇ、Aちゃん。ここはどこ？」
「.....ホテル？」
「そうだね」
「えっ...？」

女の子みたいに可愛らしくしゃがんでる雅紀くんの目が、オトコになった瞬間を見た。