PARACAGE 9th【ars】 (ページ19)

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299.レセプション。ページ19

家を出ると、家の前に一台の車が停まってる。

「...ん？」

見覚えのある車。
これって...

「翔さんに借りて来といた」

そう言いながら背後からやって来た潤くんが、助手席のドアを開ける。

「早く乗ってくれない？」
「あ...え？」
「送ってく」
「えっ！？そんなの、悪い！」
「ショーなんて、最初から見なきゃ勿体ないだろ」

さっき部屋に押し込まれたみたいに、今度は車の中に押し込まれる。
何も知らない人が見たら拉致現場。

運転席に乗り込んだ潤くんは「早くシートベルトしろ」って言いながら、車を発進させた。

会場に着くまで、私達は特に何も喋らなかった。
ただただ、車内に流れるラジオを聴いて、時々潤くんがそれに合わせて小さな鼻唄を歌って。
私は窓の外を流れる景色を、ただただ、目で追い掛けた。

私、本当にちゃんと直視できるのかな...
行かない方が、良いんじゃないかな...
二人で居る姿を見ない方が、この先上手く行くんじゃないかな...

ずっとそんな事を考えてた。

潤くんが会場近くのコインパーキングに車を停める。
ショーの開演まで、まだ少し余裕があった。

「一人じゃ不安？」
「え？」
「そーゆー顔してるから」

子供をからかうように、「なっさけないねぇ」って嘲笑う。

「レセプションまでついてってやるわ」
「......」
「せっかく間に合うように連れて来てやったのに、怖気づいて入らずに帰って来られたら迷惑だし」

潤くんが車を下りたから、私も慌てて下りてその背中をついて行った。

会場になってるクラブのレセプションで私がチケットを出したりしてると、潤くんはそこに居たスタッフの人に何か話してる。
そのスタッフさんは潤くんと話した後に、奥へと入って行った。

「どうしたの？」

戻って来た潤くんに訊く。

「うん、お前が勝手に逃げ出さないように見張ってて貰おうと思って」
「え！？」

見張り！？
私、さっきのスタッフさんに見張られるの！？

「大丈夫だよ！ここまで来たら逃げないから！」
「あ、来た来た」

潤くんは必死に抵抗してる私を見ようともせずに、全然違う方向を見てる。

「何やってんのよ」

そっちを見ると、見覚えあるチェック柄のスーツを着て両手をポケットに突っ込んで歩いて来てる人。

「え...何で...」
「何で？いやいや、それこっちの台詞だろ」
「何でニノくん...」

「俺が呼び出して貰った」って潤くんが、今度は悪戯っ子みたいな顔をした。