PARACAGE 8th【ars】 (ページ12)

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257.瞼。←11.21 ページ12

雅紀くんは潤くんが出て行ったドアをずっと見てる。

「......雅紀くん...？」
「あっ、ごめんごめん」

口元だけで笑って、彼はこっちに歩いて来た。
そして、隣に私の座る。

「潤ちゃん、...怒ってたのかな」
「......」
「ズルいって言われちゃった」

アハ、って雅紀くんから力無く零れた小さな笑い声。
前髪の中に掌を入れクシャっと髪を握る仕草に、私の心臓まで握り潰されたような気持ちになる。

「...あ、ほら、潤くんのブルーレイなのに私達が観るからじゃない？」

我ながら白々しい...でも、こう言うしか出来なかったのは私のズルさだ。
私も結局、ズルいんだ。

雅紀くんは「そっか、じゃあ潤ちゃんには特別素敵なお土産買って来なきゃ」なんて言ってる。

「ねぇ、雅紀くん。これ、最初っから観ようか」
「え、続きからで良いよ。最初の方は想像で補うから」
「アハハ、無理があるって。まだ30分位しか進んでないし、最初から観よ」

私はリモコンを手に取って、映画を最初に戻した。

クッションを抱いてる私の肩に、雅紀くんが寄り掛かる。
薄暗いリビングで、テレビからの光が雅紀くんの横顔を照らす。

結末は知ってるはずなのに泣いてしまったのが恥ずかしくって、どうやって誤魔化そうか...って思ってたら肩に乗ってる頭から鼻を啜る音が聴こえてソォっと見ると雅紀くんも目の下を指で拭ってた。

「ハッピーエンドは良いね」

彼は緩く微笑み、そう呟く。

「ん、そうだね」

応えると、雅紀くんがクルンと視線を私に向ける。

「あ、泣いてる」
「雅紀くんも」
「俺は泣いてないよ？」
「嘘だ、目が赤いもん」
「フフッ、そう？疲れてるから充血してんのかな？」

私の涙を自分の服の袖で拭いてくれた彼は、そのまま瞼にキスを落とした。
何故だか、拭いて貰ったばかりの涙がまた零れた。
その涙も、雅紀くんは唇で受け止め舌先でなぞる。

「涙ってしょっぱいね」

私を抱き締めた雅紀くんの背中を、ギュウっと抱き締め返す。

「......寂しい...」

こんな事を言ったら面倒かもしれない...なんて考える余地も無く、勝手に口から言葉が滑り出た事に驚いた。
驚いて、すぐに「何でも無い...」と訂正。

だけど雅紀くんは「聞こえちゃったよ」と小さく笑って、私の頭を撫でる。

「一週間だけだよ」
「...うん」
「長いか」
「...うん」
「長いね」

ふわふわと頭を撫でる掌は優しくて、何だかもうそれだけで良いって

そう、思った。