PARACAGE 8th【ars】 (ページ1)

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246.コーヒー。ページ1

「ま、良かったんじゃないの？」

潤くんが片方の口の端を上げ、笑いながら言った。

「Aが納得できたなら、それで。ベロチューでも何でも」
「だから、してないってば...」
「はいはい」

軽くあしらわれた。

「俺、コーヒー飲むけどいる？いるならついでに淹れるけど」
「いるー。今日は甘いの飲みたい」

潤くんの問い掛けに、ニノくんが間髪入れず応える。

「Aは？」
「あ...コーヒー...」

コーヒーって単語で、今朝のぬるいコーヒーを思い出して口元が緩む。
ニノくんが「気ー持ーちーわーるーいー」って、そんな私の肩をグイーっと押した。

「何で気持ち悪いの！」
「だって思い出し笑いとか、絶対カレピッピのコト考えてたんだろーが！」
「はっ...！？何それっ！」
「カレピッピ分かんないの？今時の若い子は彼氏のコトそー言うらしいよ？オジサンには理解できないけど」
「カレピッピが彼氏って事くらい分かって...」

私がニノくんに言い返してる途中で「コーヒー飲むのか！？まずこっちの質問に答えろ！」って潤くんに怒られた。

「あっ、ごめんっ、飲みます...」
「甘いの？苦いの？」
「...甘いの」

ったく...なんてブツブツ言いながら、潤くんはキッチンに入って行った。

「ニノくんのせいで潤くんに怒られたじゃん...」
「何でオレのせいなのよ。思い出し笑いするAの責任でしょ」
「う...」

確かにその通りか...。
私が黙ると、ニノくんは鼻唄を歌いながらさっきまで読んでたファッション誌に目を戻した。

リビングの端っこでは、ニゴが丸くなって寝てる。
縁側のカーテンがちょっと開いてるのに気付いたから、閉めに行く。
キッチンからは、食器のぶつかる小さな音。
ニノくんの鼻唄。

聴いた事ある歌。何だっけ。
結構前に流行った曲だと思うんだけど。

「ねぇ、その曲って...」

思い出せなくってニノくんに訊こうと思った瞬間、鼻唄が止まった。

彼は雑誌のあるページをジィっと見たまま、動かない。

「ニノくん？」
「......」
「ニノくーん？」
「あ...なぁA、相葉さんって仕事で近々どっか行く？」
「え？あー、海外ロケ行くって言ってたけど...何で？」

ニノくんの眉間に皺がキュっと寄った。
雑誌を見てた視線が私に向く。

「もしかして、海外ってロンドン？」
「さぁ...そこまでは聞いてないけど、どうして？」
「いや...」

キッチンから出て来た潤くんが、話してる私達を見て首を傾げる。