PARACAGE 8th【ars】 (ページ35)

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280.寝不足。ページ35

とは言え。

同じ家に住んでいる。
朝は会わなかったにしても、夜は顔を合わせる。
部屋に閉じ込もってる訳にもいかない。

リビングで珍しく翔さんも一緒に、智くんとニノくんと私で夕食を食べていたら潤くんが帰って来た。

「ただいま」
「おかえり潤、早いね」
「ちょっと寝不足で頭回んなくなったから、今日は切り上げた」

寝不足...
チラ、と潤くんを見ると少し目が赤い気がして胸がチクリとした。

「それ何食ってんの？」
「Aさんが作ってくれた豚の生姜焼き」

翔さんが応えると、智くんが「ポークジンジャー」って合いの手のように呟く。

「それ、俺のもあったりする？A」
「えっ...あっ！」

あまりにも潤くんが普通に話し掛けて来たもんだから、ビックリしてお箸を床に落としてしまった。
しかもそれは、コロコロと潤くんの足元へ。

「何やってんの」

ハァ、と溜息を吐いた彼がそれを拾ってキッチンへと入って行く。

「あー！いいよ、いいよ！自分で洗うから！」

慌てて席を立ってキッチンに入ると、潤くんがシンクでお箸を洗いながらこっちを見た。

「なぁ」
「...はい」
「そんな分かりやすく動揺されると、俺まで緊張して来るんだけど」
「あっ...ごめん...」
「生姜焼きある？」
「智くんが明日のお昼ご飯にするーって言ってた分ならあるけど...良いのかな」
「良いでしょ」

潤くんは冷蔵庫から明日の智くん用だった生姜焼きを出して、ラップを剥がしレンジの中に突っ込んだ。

「お前は早くあっち戻って飯を食え」
「あ...」
「はい、箸」

洗ったお箸を渡されて、私はダイニングに戻ってさっきと同じようにニノくんの隣に座る。
ニノくんはほっぺた真ん丸にして、ご飯を食べてる。

生姜焼きのお皿とご飯の入ったお茶碗を持って戻って来た潤くんは、智くんの隣に座った。

「ねぇ、これ明日のおれの昼ご飯...」
「俺が買い置きしてるレトルトカレー食って良いよ」
「バターチキン？」
「マッサマンもあるよ」

智くんが「マッサマン！」って言うと、翔さんが「ヒーローみたい」とケラケラ笑った。

「ねぇ、昨日の夜なんだけどさぁ」

ニノくんがモグモグしながら話し始める。

「誰か廊下で喋ってなかった？」

でも廊下に誰も居なくてさ、と言ったニノくんに翔さんが「仏様がお散歩してたのかな」なんて言って笑う。

「坊さんギャグ怖いよ、翔ちゃん！」

ニノくんも笑ってる。