PARACAGE 7th【ars】 (ページ4)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:1,010,516 hit

214.ドアの隙間。ページ4

「お礼を言わなきゃな...と思って」
「お礼？何の？」
「翔さんに話してくれた事」
「全然お礼を言われるよーな事じゃないよ」

雅紀くんは不思議そうに首を傾げた。

「雅紀くんはそう思わなくても、私はありがとうって思うから、ありがとう」
「何かよく分っかんないけど、じゃあ、どういたしまして！」

ニカッと笑うから、つられて私も笑う。

...ってゆーかこの人、私がずっと憧れてた人なんだよね...。
これを思い出すと、ほんの些細な事でも吐きそうな位にドキドキするから考えないようにしてたけど...。
ドアに手を掛けて部屋からひょこっと身体を廊下に出してる雅紀くんは、何か、雑誌から飛び出して来てるみたいに見えて今日はダメだ！
冷静な内に、早く部屋に戻ろう！

「じゃ...、私はこれで！」
「ねぇ、Aちゃん」

行こうとしたら呼び止められて「じゃ」のタイミングで軽く手を挙げてた私は、そのポーズのまんま雅紀くんの次の言葉を待つ。

「ギュッてして良い？」

口元だけで笑って、私の反応を伺ってる雅紀くんが死ぬほど格好良くて熱が出そう。
私、本当に殺される...！

「だっ...だめだよ！こんな...廊下で...」

ヒソヒソ、声を潜めて抵抗。
抵抗...ってゆーか、自制かもしれない。

「だったら、部屋に入る？」
「...それは...えっと...」
「フフッ、困ってる」
「.....」
「俺、昔っから女の子を困らせるの好きなの」

俯き始めてた私の頬をツンと人差し指でつつく。

「好きな女の子には、意地悪しちゃうってゆーやつ」

胸の奥の方から、ドロドロと甘いクリームが流れてくる。
今朝からずっとクリームまみれな気分だ。
そろそろ胸焼けしそうなんだけど、全然平気だ。まだまだいける。
むしろ、その胸焼けだってバッチコイ！って思ってる。

そんな馬鹿なことを考えてる私の頭に雅紀くんは掌を乗せて、「意地悪言ってごめんね」ってポンポンと撫でた。

「そう言えば、翔ちゃん何か言ってた？」
「何か？何かって？」
「あ、別に何も聞いてないなら良いの」
「.....」
「じゃあ、おやすみ。また明日ね」
「うん、おやすみ」

彼はもう1度私の頭を撫でて、ドアを閉めた。

翔さんが言ってた事って、あれかな...
私と居ると...って...

あ、ダメだ、また泣き叫びたくなってる。
ダメだダメだ。

自分の部屋に戻ってベッドに腰掛けると、急に疲れた。
昨日の夜から色々あり過ぎた私の心と体が、睡眠を欲求してる。

お風呂は明日の朝にしよう。