PARACAGE 7th【ars】 (ページ21)

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231.眠れる子供。ページ21

遠足の前日でもすぐに眠れる子供だった。
どんなに楽しみな事が待ってたとしても、眠れないなんて事は一度も無かった。

「...寝てない...」

そんな私が、眠れなかった。
正確に言えば、寝た。多分、二時間くらいは。

いつものように忠犬して雅紀くんをお迎えして、「明日どこ行こっかー」なんてちょっとだけお喋りして、さぁ早めに寝ようって部屋に戻ったは良いけど全く寝付けなかった。
何着る？とか、そう言えば明日の天気は？とか何か色々考えてたら全然眠れなくって、気付いたら12時を過ぎてて。
早く寝なきゃ！って思えば思う程眠れなくなるのは、あるあるなんだと思う。
私はそのあるあるに、完全に嵌ってしまった。

やっと眠れたのはきっと、新聞配達のバイクの音が聴こえて来た頃。
約二時間前。
なのにスマホのアラームが、やっと眠れた私を叩き起こした。

「......眠たい...」

この眠気が昨日の夜欲しかった！
そう思いながら身体を起こす。だって二度寝なんかしたら、もう起きれない自信がある。

窓に近付きカーテンを開けたら、よく晴れてる空。
秋晴れだ。
目を覚ます為に、窓を開けて冷たい空気を入れる。
深呼吸をしたら、少し頭がすっきりした。

一階に下りると、ドアを開けっ放しのダイニングの中で向かい合ってニノくんと潤くんが朝ご飯を食べてる。
こっちに背中を向けてるニノくんは物凄い猫背。こっちを向いてる潤くんは廊下に居る私に気付いて「おはよ」と言った。

「おはよう」
「A、今日は休み？」
「うん」
「良いなぁ、平日の休み。土日だとどこ行っても混んでるし」
「フフッ、これがサービス業の特権だよー」

私と潤くんが喋ってるとニノくんがゆっくり振り返って、「はよ...」と呟きまたご飯の続き。ホント、低血圧男子。

二人を横目に、私は洗面所へ行き顔を洗って歯を磨いて。
二階に戻る前にもう一度ダイニングの中を覗くと、さっきまで低血圧でグッタリしてたニノくんが爆笑して潤くんと喋ってる。
この数分で何があったんだ。

二階へ上がり廊下を歩くと、鶯色のドアが開く。

心臓がドクンと鳴り、思わず立ち止まってしまう。

ドアから姿を現した雅紀くんは、普段は分けてる前髪がドサっと全部下りていて少し幼い。
でも、その前髪の隙間から見えた眠そうな目は信じられない位に色っぽくて困る。

「あ、おはよ。Aちゃん」
「うん...おはよ」
「顔洗って来るね」

横を通り過ぎる時、彼は私の肩に優しく触れた。