PARACAGE 7th【ars】 (ページ3)

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213.事件はあり。ページ3

お風呂場から音がして、廊下を歩く足音、階段を昇る足音が続けて聴こえた。
潤くんが出て来たらしい。

「じゃあ僕、お風呂頂きますね」

ソファを立ち、リビングから出て行きかけた翔さんが「あ」と振り返る。

「Aさん、ここは厳しい寮でも無ければ家族で住んでる家でもありません」
「はい...え？」
「だから、ひとつ屋根の下お持ち帰り事件が起きても別に咎める事はありません」
「.....」
「まぁ、一応そーゆー行為はやめてねって事にはなっていますが」
「やっ...ヤッてないですからっ！」
「こらこら、女の子が使う言葉じゃないですよ」

慌てて口を押さえる。
翔さんは穏やかに微笑む。

「テラハウス内は恋愛禁止じゃありません」
「.....」
「と、オーナーの孫である僕が今決めました」
「翔さん...」
「女の子はAさんしか居ないからこれ以上の恋愛事は起きないんですけどね！」

確かにこの家に女の子より綺麗な顔の男子はゴロゴロ居るけど、みんな見事に男！って感じだから腐な方向の展開は起こらなさそう。

「だから、まぁ今後どうなるかは分かりませんが僕らの事は気にしないで下さい」

ではでは、と翔さんはペコっと頭を下げてリビングから出て行った。

再びシンと静まったリビングで1人、フゥと息を吐く。
さっきまで姿が見えなくなってた二ゴがダイニングの方からポテポテと歩いて来て、ピョンとソファに飛び乗った。

「二ゴー、お前のご主人様達は本当に優しいねぇ...」

その頭を撫でてやる。
目を閉じた二ゴに「お前も優しいね」と言うと、薄く目を開けてまた閉じた。

そんな二ゴをソファに寝かせたまま、電気を消して私もリビングを出る。
階段を昇り、鶯色のドアの前で呼吸を整える。

早打ちになって来た心臓を落ち着かせるように深呼吸して、そのドアをノックした。
コンコン、と2回。

「はーい？」
「あっ...私、です」
「Aちゃん？」

部屋の中から声がして、すぐにドアが開いた。
雅紀くんはちょっと驚いた顔をしたけど、すぐに微笑む。

「どしたの？」
「あ...あの...」
「一緒に寝たい？」
「えっ！？違う違う！」
「えー...違うの？」

子犬みたいな顔。
どうしよう、母性本能擽られまくってる。

「あ...違うとも言い切れないんだけど、さすがに連日はやっぱり...」

私がモゴモゴしてると、雅紀くんは「ごめんね、冗談だよ！」って笑った。

「冗談...」
「フフッ、冗談でもないけど」

もうやだ、胸きゅん止まらない。