PARACAGE 7th【ars】 (ページ1)

今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:1,010,407 hit

211.そんな馬鹿な。ページ1

泣き叫びたい衝動を押さえる為に焼き鳥を食べてると、翔さんも食べかけてたハツの串をまた手に取って、パクっと咥えた。

「あの...」
「ん？」
「智くんから聞きました、翔さんも心配してくれてるって」
「...あ！あぁ、はい。何か勝手に心配しちゃってごめんなさい」

眉を下げて、翔さんが申し訳無さそうに微笑む。

「そんな！翔さんに心配して貰えるなんて、私は三国一の幸せ者です」
「あははっ！そんな馬鹿な」

朗らかな笑い声。
翔さんの笑い声は、聴いてるだけでこっちまで楽しくなって来る。

「でも、きっと智くんの方が先に気付いてましたよ」
「え...そうなんですか？」
「智くんは人の気持ちを感じ取るのが上手いんです。例えば笑ってない人を見て僕が『つまんないのかな？』って思ってても彼は『楽しそう』って言ったり、逆に泣いてない人を見て『あの人、悲しそう』って言ったり。彼には何か感じるみたいなんです」
「へぇ...でも、それ分かる気がします」
「でしょ？そんな人と小さい頃から一緒に居るから、秘密なんか作れないんですよ。何でもすぐにバレてました」

参ったなーって雰囲気の表情。
でも、困ったなーでは無い。
そんな智くんと友達だという事を、誇らしく思ってる感じ。

「初恋も、初めての彼女も、数々の失恋も全部すぐにバレちゃってました」
「失恋！？しかも数々！？翔さんが失恋なんかするんですか！？」
「しますよ！失恋の結果、今現在恋人が居ないんですから」
「そうか...お眼鏡にかなう人がなかなか居なくて、翔さんが女性にお別れを告げちゃうんですね」

それも致し方ない。
潤くんと同じで、理想がどんなにチョモランマでも「そうだよね、うんうん」って笑顔で頷ける人だ。

「いえ、フラれるんです。いつも僕がフラれてます」
「うそっ！？翔さんを振るなんて、贅沢すぎて天罰が下る！」

私が仰け反ると、翔さんはまた「そんな馬鹿な」って笑ってる。

「でも...どうして？」

翔さん、素敵な人なのに。

「うーん...それが分かったら苦労しないんですが...きっとそんな事も分からないような男だからフラれるんですね」

今度は私が「そんな馬鹿な...」と呟いてしまった。

「そう言えば、初体験も」
「えっ！」
「経験した翌日に、智くんにバレました」
「翔さんの初体験...ちなみにおいくつの時？」
「もしもし？何を想像してるんですか」

翔さんが照れ臭そうに口の端を上げる。