PARACAGE 6th【ars】 (ページ33)

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208.嫌味ではない。ページ33

何がタチ悪いって、この二人は自分達の見た目が優れてる事を自覚してるって所だ。
そしてそれを存分に面白がってる。
鼻に掛けるんではなくて、面白がってるんだ。

だから悔しいけど、嫌味じゃないんだよなぁ...なんて思いながら「これ食って良いの？」って訊いて来る二人を起き上がって眺める。

「良いよ、みんなで食べようと思って買って来たから」
「ってか、すげぇ量だな」
「お前が買い占めたから、今日はもう店仕舞いしてたんじゃないの？」

潤くんの言葉に、ニノくんが「あー、それだわ」って笑ってる。

縁側に座って、ニノくんがネギマ串をパクっと食べた。

「ん...冷たい...」
「じゃあ俺、あっため直して来るわ」

焼き鳥のパックを手にしてキッチンへ向かう潤くんの背中に「ビールもー！」って声を掛けるニノくんを見て、さっき雅紀くんにあのビール飲まさなくて良かった...って本気で思う。
無くなってたらこの人、どうなるか...。大暴れして犯人捜しするんじゃない？

冷たいと言いながらも食べきった焼き鳥の串を口に咥えたまま、ニノくんは夜空を見上げて鼻唄を歌ってる。

「ニノくん」
「んー？」
「お元気ですか？」
「は？ンフフ、何なのそれ」
「...元気かなー？と思って」

彼の失恋を知った後からも、ニノくんはあまり変わらない。
平日に遅く帰って来る事が無くなっただけで、落ち込んでる様子も思い悩んでる様子も見せない。

「ま、それなりに」
「そっか」
「モテない訳じゃ無いし」
「フフッ、そっか」
「ただいくらモテても、オレが恋愛する気になるかどうかは別だよね」
「......」
「おい、そこ突っ込むトコだろ！」
「えっ...！？あっ、...おいおい！自分でモテるって言うなよー！」
「ツッコミ下手くそか！」

手の甲で私の二の腕をポンっと叩く、所謂ベタなツッコミをされて顔を見合わせてフフッと笑う。

そこに戻って来た潤くんは焼き鳥をちゃんとお皿に移し替えていて、パックごと持って来てた私との女子力の差を見せ付けられた。
しかも種類ごとにちゃんと並べられてる。

「潤くん、本当に女子力分けて欲しい」
「無理しなくても、ズボラはズボラのまんまで良いんじゃないの？」
「今私、貶されてるよね」
「貶してるつもりは無いけど、Aに女子力あるなーとは思ってない」

そんな会話を聞いたニノくんが「彼女にするなら断然潤くんだよねー」とか言っててムカつくけど、残念ながら私も潤くんを彼女にしたい。