PARACAGE 6th【ars】 (ページ24)

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199.横断歩道。ページ24

「で？何なの」
「え？」

駅までの道、潤くんがハァと大きく息を吐いた。

「お前が話あるって言ったんだろ？」
「あっ！」
「さっさと話さないと、駅着くぞ」

潤くんと私は同じ電車に乗るけど、この時間帯は満員電車。
そんな中では話せない。

「あのー...今朝は何と言うか...」
「雅紀とは何も無かったんだろ？」
「うん...無かった」
「じゃあもう良いじゃん。これ以上何か話す事ある？」
「でも...潤くん、怒ってた気がして...怒ってたよね...？」
「怒るって言うか...」

うーん...って少し唇を尖らせて眉間に皺。彫刻。

「朝言った言葉のまんまだよ。何やってんのって思っただけ」
「......」
「同居人同士で何なのって、まぁ俺も何か寝起きで機嫌悪かったのもあってイラっとしたんだろうな」
「...そっか...ごめんね...」
「いや。俺も頭ごなしに嫌味言って、冷静になったら申し訳無かったなと思った」

悪い、と潤くんは私に頭を下げた。

「ううん！そんな、謝って貰う必要は無いって！」

ブンブンと首を振ったら「首、吹っ飛んで行きそうだけど」って笑われる。

「目玉焼き作りながら、考えてたんだよね」
「何を...？」
「家族みたいに一緒に暮らしてても、結局他人の集まりなんだよなぁって」
「......」
「今まで男ばっかだったから、他人だって事も何も気にしてなかったけど。異性が入ったら、そりゃ状況も変わって当然だわって」

横断歩道を渡りながら、潤くんが喋る。

「ただ...」

潤くんが、顔をこちらに向けた。

「お前がどんなつもりで雅紀の部屋に入ったのかは、正直気になるよ」

説教する訳でも、尋問する訳でも、追求する訳でも無いようなトーンの声。

「一応訊くけど、あれは朝ちょっとお邪魔したんでは無いよな？一晩過ごしたんだよなぁ」
「...うん」
「しかも、相手は雅紀。大野さんの部屋とは、また意味が違って来る」

きっと潤くんは、私が智くんの部屋に避難した事を言ってるんだろう。

「何とも想ってない男の部屋で、Aは一晩過ごすの？」

上手く答えられなくて、唇をギュっと噛む。

「それとも、雅紀の事が好きなの？」

唇を噛んだまま、ゆっくりを頷くと

潤くんも、小さく二回頷いた。

「だったら仕方無いか」
「......え？」
「好きなヤツが、あんな近くに居るんだから。だったら、もう仕方無いだろ」
「......」
「秩序とか、考えてる余裕なんかある？それ」

駅が見えて来た。