PARACAGE 6th【ars】 (ページ23)

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198.反抗期。ページ23

急いで階段を下りる。
玄関では今から家を出る潤くんが、靴ベラを使い革靴を履いていた。

「良かった、間に合った！」
「は？」
「...潤くんと一緒に出ようと思って」

言いながら私も靴を履く。

「お前、出るのもうちょっと後だろ」
「そうなんだけど...話したいなぁと思いまして...」
「何、今朝の言い訳？」
「え...あ...」
「冗談だわ。泣きそうな顔すんなよ」

パコンと軽く私の後頭部を叩いた潤くんがさっさと玄関を出て行ったから、慌ててその後ろを追い掛ける。

癖で桜香寺の方へ行こうとしたら、潤くんに「こら、どこ行く」って言われた。

「翔さんに朝の挨拶を...」
「お前、毎朝そんなコトしてんの？」
「早番の日は翔さんが調度庭掃除をしてる時間だから」
「でも今日は時間ズレてんじゃん」
「あ...そっか」

でも...と、桜香寺の方を見ると「あぁもう」って潤くんが面倒臭そうにお寺の方へ歩き出した。
何だかその態度が反抗期の男の子みたいでクスっと笑ってしまう。

「何笑ってんだよ」

バレた。

「笑ってないです」
「Aってそんなニヤけた顔してたっけ」
「こんな顔です」

そんな話をしながら二人でお寺を覗くと、翔さんが箒を持って出て来たところ。

「翔さん！おはようございます！」
「あ、Aさん！...と、潤？」

え？え？とちょっと笑いながら翔さんが私達の方までやって来る。

「潤がこっち寄るなんて珍しい事もあるなぁ、台風来る？」
「コイツが行きたいって言うから来ただけだよ」

フンっと鼻から息を吐き出して、また反抗期みたい。
ちょっと子供っぽい潤くんは、時々可愛い。
そんな潤くんに「そっか」と笑った翔さんは、私に「今日は早いですね」と微笑んだ。

「あー......あ！朝活です！」

上手い理由を見付けられなくって、物凄い曖昧な事を言ってしまった...
だって潤くんと話がしたくってとはちょっと言えない...
隣で潤くんも呆れた顔してる。

「朝活ですか！良いですね、朝早くから行動するのは気持ち良いですもんね！」

あ、納得してくれた。
潤くん、ビックリ顔。
翔さんは空に顔を向けて目を閉じ、両肩をキュっと上げてる。キュート。

「では、行って来ます」
「はい、Aさん行ってらっしゃい」

チラリと潤くんを見上げる。
彼は面倒臭そうに片眉を上げる。

「...行って来まーす」
「はい、潤も行ってらっしゃい」

翔さんが手を振った。