PARACAGE 6th【ars】 (ページ7)

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182.笑う。ページ7

智くんは、私が雅紀くんを好きだって事は知らないはず。
...気付かれてないはず。
.....気付かれた...？

そう言えば智くんは、何となくこれまでも私が雅紀くんの事で落ち込んでたりする時に助けてくれてた気が...いやいやいや、偶然偶然。
優しい人だから。
それだけの事だよ。そうだそうだ。

「隣でイチャイチャしてる男女が居ると思ったら気まずいもんね！勘弁して欲しいよね！」

とりあえず、アハーなんて笑って誤魔化す。

「おれが隣の部屋だったら、乱入しちゃうかも」
「えぇ？乱入して雅紀くんを叱るの？」
「ううん。乱入して混ざるの」
「うそだー智くーん」

まさかの発言にテーブルに突っ伏して笑ったら、智くんもケラケラ笑った。

「だっておれもオオカミだもん」
「智くんは猫みたいだよ」

顔を上げると、テーブルに顎を乗せた智くんと目が合う。
それも、猫っぽい。

「どーかなぁ？」

んふふ、って笑う。

癒し...と言いたい所だけど、妙な色気を感じてしまって思わず目を逸らした。

「さてと、おれそろそろ行くね」
「うん。いってらっしゃい」

智くんがダイニングを出ていって、上がってる自分の口角に気付く。

「...そっか」

智くん、笑わせてくれたのかもしれない。
絆創膏になってあげるって、あの言葉だけでも嬉しかったのに。
本当に傷口にぺたりと絆創膏を貼ってもらえた気がする。

部屋に戻って着替える時。
クローゼットの中、チェックのスカートで目が止まった。
ニノくんが作ってくれたスカート。
まだ一度も着ていない。
いつ初出ししよう？ってずっと迷ってたけど、何となく今日だ。

雅紀くんが私と同じ香水を使ってると知ったあの夜から、ずっとズキズキしてた傷口。
また開いてしまった傷口が塞がるのかは分からないけど、前だって痛みには慣れたじゃないか。

智くんが絆創膏を貼ってくれたから頑張れる！って。
気持ちを新たに、って気分で。

クローゼットから出して自分に当ててみる。
やっぱり形が綺麗で柄も可愛い。
何を合わそうかなぁ？なんて思うだけでワクワクして来た。

ビッグシルエットのTシャツと合わせてスカートを履いて。
そうだ、靴はハイカットのオールスターにしよう。

そんな事を考えながら見た姿見に映った私は、笑ってた。
自分の単純さに、また笑う。

駅までの道。

スカートの裾を揺らして、スニーカーで歩く。

雅紀くんと同じ香りを纏って、背筋を伸ばして歩く。