PARACAGE 5th【ars】 (ページ10)

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150.寄り道。ページ10

後部座席にお肉を積んで、車に乗り込む。
帰りは私が運転しますよって言ってみたけど、「女性は男に甘えてれば良いんです」なんてまた恐ろしい殺し文句を吐かれて「ぎゃー！」って声が出てしまった。
翔さんには大笑いされたけど。

「そう言えば、前にも一緒に買い出し行きましたよね」
「あ、そうでしたね！」

翔さんが迷子を助けた時だ。
スーパーヒーロー！って思ったあの日。

「僕ら、買い出しコンビですね」
「アハッ、光栄です！」

そんなコンビを組みたい女子がこの世に何人いるんだか...。何百人？いや、何万人？

テラハウスの近くまで帰って来た頃には少しづつ陽が傾いて来ていて、そろそろ雅紀くんも帰って来るかなー...って考えてしまった自分が恥ずかしい。
どんな素敵な人の隣に居ても、結局私は雅紀くんの事を考えてる。

「Aさん、ちょっと寄り道しませんか？」
「寄り道ですか？」
「はい」

頷いた翔さんが連れて行ってくれたのは、テラハウスから程近い丘の上にある公園だった。
遊具はブランコと滑り台だけの、小さな公園。

でも、そこからの景色は高台にあるから町が一望できた。

「あー...ちょっと早かったかな」

その景色を見ながら、何だか翔さんがちょっと残念そうに言う。

「昔、ここで智くんとよく遊んだんですよ」
「そっか、幼馴染みですもんね！」
「ブランコで靴飛ばしとかしてたなぁ」
「懐かしい！靴飛ばし！」
「やりますか？」
「やります！」

何年振りだー！？靴飛ばし！
二人で並んでブランコに座って、勢いよく漕いで靴を飛ばす。
何故か翔さんの飛ばした靴が、前じゃなくて後ろに飛んで二人で大爆笑。

「うちの家族、智くんが大好きでね」
「そうなんですか」

ブランコでユラユラ揺れながら、翔さんが話す。

「だからテラハウスの空き部屋を使わせてって智くんが言って来た時もすげぇ喜んでたんですよ」
「へぇ」
「有名になれよー！って。うちから大作家が誕生するんじゃないか！って、もういい加減うるせぇよって位に」
「フフッ」

いつも私に丁寧な言葉遣いで話してくれる翔さんから、ちょっと雑な言葉が出て来ると何だか妙に安心した。

「翔さんって、ニノくんとは高校が一緒なんですよね？」
「うん。学年は違いますけどね」
「生徒会長とかしてそう、翔さん」

投票数もダントツで当選しそう！
立候補した時点で、当選確実って感じ。

でも翔さんは、苦笑いして首を振った。