9 ページ10
「なんだ。またおまえか」
「おまえじゃなくて、小西だよ、美馬ちゃん」
「そのちゃん付けをやめろノロマ女」
「美馬ちゃんが、私のことをノロマ女呼ばわりしないなら、美馬くんにするよ」
そう返せば、美馬ちゃんは黙って読みかけの雑誌へと視線を戻してしまった。彼の中で、私が何度名前を教えたところで『ノロマ女』という名前で確定らしい。
どうやら初日に私が『やらかした』ことは、彼の中では無かったことになっていたようで、謝罪の言葉を述べても『なんだそれ』の顔ばかりされるのでもう知らない。頼まれたって謝ってやるもんか。
「……なんでおまえはクラスが違うのにほぼ毎回休み時間に俺のところに来る？」
「それは美馬ちゃんとお話したいからだよ」
「友達がいないのも考えようだな」
「それ、私に言える立場だと思ってる美馬ちゃんすっごーい」
私の言葉に彼はピクリと眉を動かした。『俺はおまえとは違う』とでも言いたいのだろう。私から言わせてもらうと違うところなんて一つもないのだけれど。
「クラスで友達が出来ないのか。鬱陶しいから嫌われるんだろうな｣
「そういう美馬ちゃんはどうなの？ 野球部以外で声掛けてくる人いないじゃん！ こーんなに眉釣り上げて睨みつけてるからだよ！」
私は自分の両眉を人差し指で持ち上げて、目だって、タレ目だけど頑張って釣り上げて彼の顔真似をする。普段から人に対してどんな顔をしているのか、この際ハッキリ教えてあげた方が良い。
すると彼は、私を見て一瞬きょとんとした顔をすると、すぐさま口元を手で隠して顔を背けた。
「…………美馬ちゃん、今、笑ったでしょ」
「……………………笑ってない」
「嘘だぁ！！ 間があった！！」
＿＿女性の顔を見て笑うなんて失礼な！！
私は知っている。顔を背けた彼の肩が僅かに震えていたことを。笑った！ と、問い詰めれば『なんの事だ？』と言わんばかりにおすまし顔。
ポーカーフェイスは崩せない。とは、まさにこの事だろうか。なかなかに手強い相手だ。
「よし！！ 明日も美馬ちゃんから絶対に一本取ってやるんだから覚悟してね！！」
「なんだ一本って。柔道の技か？」
「……美馬ちゃんて、天然なのかわかんないけど、時々そういうこと言うよね」
友達までの道のりは、まだまだ遠い。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 85人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆゆ - 美馬ナインwww🤣 (9月16日 23時) (
レス) id: d177d043dc (このIDを非表示/違反報告)
愛(プロフ) - ゆゆさん» 美馬ちゃんには散々振り回されそうな予感しかしないのでちょっとした仕返しの回です😏✨ (6月15日 21時) (レス) id: 259fa0886e (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 美馬ちゃんが振り回されてる感じがたまらん！！🤣💕 (6月6日 2時) (レス) id: 385c1e544a (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - わあああ！！😭そんなふうに言ってもらえて私も嬉しいです！！😖💕更新も楽しみですが主様からの返信が1番楽しみです！！😆🫶🏻 (2023年4月30日 21時) (レス) id: c431f15d29 (このIDを非表示/違反報告)
愛(プロフ) - ゆゆさん» 気持ちに自覚するまでかなりの時間を有する男だと思っています笑🤣‼️ こちらこそいつもコメントありがとうございます、ゆゆさんのコメントに救われています🙏🙌 (2023年4月29日 21時) (レス) id: 259fa0886e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
