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「美馬、ちょっといいか?」
うるさいのが帰り、漸くこれで練習が出来るかと思いきや、教室でわかれた北大路に呼び止められた。
俺が言わずとも『手短に終わらせる』とだけ言うので仕方がなく話を聞くことにした。
北大路とはクラスが違うのもあるが、殆ど一対一で話すような機会はほぼない。性格が合わないというわけではないが、腹を割って話すまでの仲では無いことは事実。
無言を肯定と受け取った北大路が『小西さんは?』と聞いてくるので、その名前に俺は思わず顔を顰めていたらしい。
「美馬、そんなに小西さんを邪険にするな」
「邪険だと? どの辺が邪険にしているのか説明して欲しいぐらいだな」
「……あのなあ、美馬、」
「説教なら他所でしろ」
今日の北大路はやけに執拗い。説教じみている所も含めて、だ。
何故そんなに北大路はアイツに拘る。ああそういえば、アイツもアイツで北大路に拘っていたな。
『小太郎ちゃん!! 誤解だって!!』
ふと、脳裏に監督室でのやり取りが過ぎる。
ーー監督に対して、そんなに全力否定しなくてもいいだろ!
らしくもなく、苛立ちに任せてバッドをスイングすれば、ほんの少しスッキリはしたものの、北大路がまだここにいるせいか、苛立ちは引かない。
「北大路……教室でのこと、悪かったな」
「ん? なにがだ?」
「アイツと楽しそうなところ、俺が来たから邪魔しただろ。俺はそういうのには疎いんだ、悪かったな」
スイングする手は止めない。バッドが空を切る音だけが響く。北大路は何も言わない、俺も何も言わない、話すことがないからだ。
「……美馬、一応説明しておくが、小西さんの持っていた大量のお菓子の山、あれは美馬あてだぞ」
「……………………は?」
バッドを振る手を止めて振り返る。北大路は呆れた表情を浮かべて、ぽかんと口を開いている美馬へ再度告げる。
「お前が何を苛立っているのか理由は知らないが、あのお菓子の山は本来は俺にあげるものじゃなくて、お前にあげるものだったんだぞ」
「勘違いをしているようだから伝えておく。俺と小西さんはクラスメイトで仲は良い方だが、それ以上でもそれ以下でもないからな」
ジャリ、ジャリ。アスファルトの上を歩く音が遠ざかる。
放課後に教室で律儀に待っていたのも、あの大量のお菓子の山も、つまりは…………?
「…………甘いものは好みじゃないが、勉強代ぐらいにはなるだろ」
そう一人で呟く美馬の表情は、普段の彼からは想像出来ないほど穏やかな表情をしていた。
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ゆゆ - 美馬ナインwww🤣 (9月16日 23時) (レス) id: d177d043dc (このIDを非表示/違反報告)
愛(プロフ) - ゆゆさん» 美馬ちゃんには散々振り回されそうな予感しかしないのでちょっとした仕返しの回です😏✨ (6月15日 21時) (レス) id: 259fa0886e (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 美馬ちゃんが振り回されてる感じがたまらん!!🤣💕 (6月6日 2時) (レス) id: 385c1e544a (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - わあああ!!😭そんなふうに言ってもらえて私も嬉しいです!!😖💕更新も楽しみですが主様からの返信が1番楽しみです!!😆🫶🏻 (2023年4月30日 21時) (レス) id: c431f15d29 (このIDを非表示/違反報告)
愛(プロフ) - ゆゆさん» 気持ちに自覚するまでかなりの時間を有する男だと思っています笑🤣‼️ こちらこそいつもコメントありがとうございます、ゆゆさんのコメントに救われています🙏🙌 (2023年4月29日 21時) (レス) id: 259fa0886e (このIDを非表示/違反報告)
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