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「古典は教えなくても平気なのか?」
「ああ、うん!! 北大路くんが得意だって言うから今度教えてもらう約束したんだ〜。彼ね、入学テストの時」
「なんでそこで北大路の名前が出る?」
彼の問に私は再び首を傾げる。人の話を最後まで聞かないからそういうことになるんだけどなあ……。同じクラスの北大路くんは、入学テストの際、国語百点を叩き出した男で、これはクラスの男子達が話しているところを聞いて、彼もそれを否定しなかったので確定だ。
北大路くんは真面目で寡黙な人間だ。グループで課題をとく際は、分からない人には教えている姿を見たことがあるし、何よりも分かりやすいと評判なのだ。私にはとても心強い味方である。
北大路くんの名前を出した途端、彼の纏う空気が、雲行きが怪しくなる。
ーーもしかして!! 美馬ちゃんと北大路くんは同じ野球部であり、チームメイト。ポジションは違えど、ライバルだから競っている……とか?!
彼も北大路くんも、陳腐な賭け事はしなさそうだけれど、もしかしたら野球部全体でテストの結果においても競っているのかもしれない。そんな事が水面下で密かに行われている中、全くの部外者である私の侵入ーー彼はきっとそれが許せないのだ。
「ーーい、おい!! 聞いてるのか?」
ムスッと口をへの字にした彼が私に返事を求める。
ここはどう説明すべきかーー私がスパイではないと伝えるのは妥当なのか、大誤算なのか……
ぐるぐると思考を巡らせる。なにか、なにか、なにかーー……
「……ほ、ほらぁ!! 美馬ちゃんって、色白じゃない? 色素も薄いし、なんていうか……そのぉ……ロシア人とかのハーフみたいだなぁって?」
しどろもどろになりながら出した答えは我ながら馬鹿だとは思う。彼に至っては目を見開いて固まってしまった。
ーーええい、ままよ!!
「そ、それに比べて北大路くんってThe日本人顔じゃない?? だからそっちの方の人がこ、古典得意かなって……こ、平安時代とかに出てそうな顔してるし?! それに比べて美馬ちゃんは、」
ここまで述べた所で、彼が突然吹き出した。口元に手を当てて、顔は俯いて見えないが、明らかに吹き出した音を鳴らした。聞き間違いでは無い。
「み、みまちゃ」
「北大路の顔が平安時代の人物の顔だとか……本っ当に失礼な女だなお前は……」
「……っ!!」
堪えきれなかったのか、顔を上げた彼。キュッと細くなった目。ゆるく持ち上がった口角。笑った顔が子供みたいで、可愛くて、私は言葉を詰まらせた。
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ゆゆ - 美馬ナインwww🤣 (9月16日 23時) (レス) id: d177d043dc (このIDを非表示/違反報告)
愛(プロフ) - ゆゆさん» 美馬ちゃんには散々振り回されそうな予感しかしないのでちょっとした仕返しの回です😏✨ (6月15日 21時) (レス) id: 259fa0886e (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 美馬ちゃんが振り回されてる感じがたまらん!!🤣💕 (6月6日 2時) (レス) id: 385c1e544a (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - わあああ!!😭そんなふうに言ってもらえて私も嬉しいです!!😖💕更新も楽しみですが主様からの返信が1番楽しみです!!😆🫶🏻 (2023年4月30日 21時) (レス) id: c431f15d29 (このIDを非表示/違反報告)
愛(プロフ) - ゆゆさん» 気持ちに自覚するまでかなりの時間を有する男だと思っています笑🤣‼️ こちらこそいつもコメントありがとうございます、ゆゆさんのコメントに救われています🙏🙌 (2023年4月29日 21時) (レス) id: 259fa0886e (このIDを非表示/違反報告)
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