見てて。【牛島若利】

第十六話 ページ16

　
　
この声。よく知ってる声。
　
　

　
　
　
　
　
　

　
　
　
「…泣いてるのか、」
　
　
　
　
　
　
　

　

　
　
後ろから、足音が聞こえる。
　
　
　
　
　
　
　
　

　
今は会いたくなかった。
　
　
　
　
　
　
　
　

　
　
　
『牛、島』
　
　

　

「何かあったのか」

　
　
　
　


　

　


　
　
『何も…ないです…、けど、絵を描くのは…やめようと、思います』
　
　
　
　
　

　
　
　
　
　
牛島は、私の正面に回り込んだ。

　

　
　
　
　

　
　
牛島は、少し驚いたような顔をしてきた。
　

　
　
　
　
　
　
「なんでだ」

　
　
　
　
　

　
　
　
　

　


　
この人に、話してもいいのか。


　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　

　

　
私はそれで救われるのか。
　
　
　
　
　
　
　
　

　

　
　
　
　
　
　
　
救われない。
　
　
　




　

　
　
　
　
　

　

けど、少しは身軽になれるんだろうか。


　
　

　
　

　


　
　
　
　
　
　

　
『スケッチブック、もうないんです』
　
　
　
　
　

　
　
　
　
「…」
　
　
　
　
　
　
　
　
　
『それに、描く意味も、わかんないから…
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
　
誰のためとか、どんなことがしたいからとか、ないんです』
　
　
　
　
　

　
　
私は俯きがちにそう言った。
　
　



　
　
　
　
　


　
　
　



　
　
すると、牛島は私の目をまっすぐに見た。

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