【名探偵コナン】わたしの光【安室透】 (ページ32)

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３１話ページ32

「私、無理なんですよ。付き合うことが」

今まで頑なに自分のことは話さなかった私。
だからこそ安室さんは少し驚いていたが、真剣に聞こうとしてくれている。

話したとしても離れてはいかない。
彼はそうだと信じている。

「PTSDって知っていますか？」

「はい。…まさか」

「そのまさかです」

ある程度のことは予想していたであろう安室さんだが、PTSDについては予想外だったらしい。

深刻な表情をして考え始めるもんだから

「症状は軽いです！」

と、慌てて訂正をする。

まぁ＂軽くはないだろ＂という目が痛いが。

「私の症状はイラつき、フラッシュバックが主です」

そう告げると思い当たる節があるのか、ハッとする。
スーパーの前で取り乱したことを思い出しているのだろうか。

「小さなことでもイライラして、さらに情緒不安定にもなりやすいですね」

「なるほど、そういうことだったんですね」

安室さんの中で答え合わせが終わったようだ。
今まで謎だったことが全て解決したのかなにも聞いてはこない。

「なので、私は恋をしたらダメなんです」

イラつきやすく情緒も不安定。
さらには取り乱すこともあるため彼女にしたら恋が楽しいはずがない。

だからこそ私は自らそういうことは避けていたのだ。

「本当にそうでしょうか」

「え？」

目を伏せながら呟いているため表情が読めない。
先程の私の症状を聞いて、納得できるはずなのに。

どうして彼は否定しているのだろう。

「Aさん。僕にチャンスをくれませんか？」

「チャンス？」

顔を上げた安室さんは何かを決心したようなまっすぐな目で告げた。

私にとっては意図が全く分からない。
そのためただ彼の言葉を聞くことしかできない。

言えたとしても疑問だけ。
私から何かを告げるなんてことはできなかった。

「はい、Aさんが恋を出来るチャンスです」

余計に分からなくなった。

私が恋を出来るようなチャンスを、安室さんが貰う。
謎だった。

考えれば考えるほど沼に入っているような感覚に陥る。

そんな答え無き思考に彼の一言で停止命令が下された。

「貴女の1ヶ月を僕にください」

それは私と安室さんが恋人(仮)になるというものだった。