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28話 ページ29

「そろそろ帰ろうかな」


落ち着いた後は本を読み込んでいた。
その所為か結構な時間滞在をしてしまった。

「もう帰りますか?良ければお送りしますよ」

あの頃には警戒していたことも今ではすっかりしなくなった。
そのためついつい暗くなるまでいたときには今日のように送ってもらうことも。


「毎回すみません」

「いいですよ、この方が安心しますし」

車が停めてある近くの駐車場へと向かう。

安室さんの車はあのRX-7。
初めて見たときにはとても興奮した。


「どうぞ」

「ありがとうございます」

エスコートをしてもらい助手席に座る。
本当に何をしても絵になる男だ。


「今日はなんの本を読んでいたんですか?」

「毎度のことながらミステリー小説で…」


その後は本の話で盛り上がった。
この人が犯人じゃないか、こんなトリックじゃないかと自分の推理を披露したりもした。

「もしそうだったら鍵はどのように入れたんでしょうね?」

私の推理に安室さんは自然と正解へと導いてくれた。
しかも私にしっかりと考えさせている。

安室さんには探偵というよりも先生の方が合いそうな気がしてきた。
(ある)いは指揮する立場の人間だろうか。

そんなことを思いながらも推理をしていると、答えが分かった頃には家に着いていた。


「将来探偵を目指すのもいいかもしれませんね、いい探偵になりますよ」

そんな冗談を言いながらわざわざ車を降り助手席のドアを開けてくれる。
何から何まで本当に紳士的である。


「送ってくれてありがとうございます。楽しかったです」

「それなら良かった、将来は是非探偵に」


ニコッと笑い執事のようなお辞儀をするので、照れてそれどころではない。

そのためついつい大きめの声が出てしまう。

「そんな、無理ですよ!」

「ははっ、冗談です」

してやられた。
安室さんは相変わらず笑みを浮かべて本当に楽しそうである。


「長々と立ち話もあれですから、この辺で」

時計を見た安室さんは車に戻ろうとする。
それを見て私は咄嗟に腕を掴んだ。


「Aさん?」


驚いた表情をする安室さんを見て、私はふと我に返った。
そしてこの状況にどうしようかと焦ってしまう。

「あ、えっと…いつもお世話になってるので、良かったらお茶でも飲んで行きませんか?」

苦し紛れに出た言葉。
彼がそれに気づいているのかは分からない。

「ではお言葉に甘えて」

だが、笑顔でこう言ってくれたのだから結果オーライだろう。

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作者名:√ -るうと- | 作成日時:2019年3月31日 21時

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