伝えた気持ち ページ39
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光輝「あ...見てくれた...」
自分が呼んでおいて、振り返った果音さんにそんなバカなことを言い出す光輝。
果音「はい??」
A「光輝が呼んだんだから当たり前でしょ」
光輝「え?」
私と果音さんの言葉に我に返った光輝は何ともマヌケな声を出す。
光輝「あぁ〜、あっ...えっと、その...」
何の計画もなく声をかけたもんだから言葉に詰まる光輝を私は後ろから見守る。
光輝「お...俺、光輝っす。天堂光輝、2年の」
普段冷たい果音さんだけど、今は真剣に光輝の話を聞いてくれてる。
光輝「俺、果音さんに憧れてこの学校に来たんです。2年前見かけて...」
そう言って光輝が果音さんを始めて見かけた日の事を話し始めた。
光輝「写真、捨てられなくて泣いてたみたいで...」
その言葉に果音さんは右ポケットを軽く握った。
つまり...その時の写真は今も持ってる、ってことか...。
光輝「そんな果音さんを守れる男になるって決めたんです」
そんな光輝のまっすぐな瞳に果音さんは目を泳がせて言葉を探す。
果音「自主映画の撮影だったんじゃないですか?」
光輝「いや周り誰もいなかったし...」
果音さんは都合が悪くなったのか早々に光輝の前から去ろうとするけど、光輝もせっかくのチャンスを不意にしたくないらしくその前に立ちはだかる。
果音「覚えてません」
光輝「待ってよ」
果音「ていうか、またですか?」
光輝「え、何が?」
果音「妄想押しつけ系」
...まぁ、確かに果音さんの周りそんな連中ばっかだもんね。
光輝「それは...いや、違う。違います!」
もしかしたら光輝の気持ち自体が果音さんに押しつけてるように思ったのか一瞬ためらったけど、すぐに否定した。
光輝「あの時俺が見たのは絶対果音さんだった。
だから俺が好きなのは果音さんっす。」
果音さんの瞳を見て光輝はハッキリと自分の気持ちを言葉にした。
本当は今すぐにでも止めたくて仕方ないのに、私にはその資格がない。
光輝「今の俺じゃ無理とか思ってたけど、それもうやめる。
おれまだまだ全然でこの間もヤンキー兄さんにやられちゃったし...。
けど果音さんを想う気持ちは絶対負けない」
これ以上聞きたくない...。
それなのにどうしても足が動かない。
光輝「果音さんは俺が守るから。
今日から全力で果音さんに向かってく」
そう言った瞬間、私の瞳からはこれまで耐えていた涙が零れ落ち、慌てて拭った。
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作者名:ちゃそ | 作成日時:2019年3月2日 9時