思い出のぬいぐるみ ページ16
-A side-
A「ん...」
どのくらい経ったのか...、帰ってきた時にはまだ明るかった部屋もすっかり暗くなっていた。
寝起きで気ダルい身体を無理やり起こした時に、愛しい人の香りがしたと共に指先にぬくもりが触れた。
A「...なんでここに?」
そんな疑問を抱きながら肩を揺さぶって起こす。
A「光輝起きて、風邪ひくよ」
光輝「ん〜...」
普段から寝起きのいい光輝はすぐに目を覚ました。
光輝「あれ...いつの間にか寝ちゃってた...」
だけど、まだ眠たいのかフニャフニャ話す光輝。
A「おはよう、こんなとこで寝てどうしたの?」
寝起きでボンヤリしている光輝にそう話しかけると、何故か私の顔をジーっと見つめる。
A「え、何?なんかついてる?」
光輝「いや...」
A「じゃあ何?」
そう怪訝に聞いてみると、今度はニッコリ微笑んだ。
A「いや、本当に何?人の顔ガン見したり、いきなり笑ったり怖いんだけど」
光輝「いや、いつものAだなって思って」
A「え?」
光輝「屋上で様子がおかしかったから」
そう言って光輝は私から視線を外すと近くに置いてあったピンク色のブタのぬいぐるみに手を伸ばした。
光輝「コレ、まだ持ってくれてたんだ」
A「...あたりまえじゃん」
だって小学生の頃、光輝が初めてUFOキャッチャーに挑戦して初めてゲット出来たやつなんだもん。
...そう考えるとこの部屋も随分光輝にもらったもので埋まってるな...。
光輝「このブタの名前、何だっけ?」
A「ホクブー」
光輝「そうだったね....で、何でホクブー?」
A「知らないよ、ホクブーって名前つけたの光輝じゃん」
光輝「そうだっけ?」
...まぁ、そんなことだろうとは思ったよ。
きっとあの頃ふと思いついた名前を口にしただけなんだろうから。
_じゃあ、あれ取る!
_何でブタ?
_可愛いじゃん、取れたらAにあげる!
そう言ってお母さん達に呆れられながらも何回も挑戦する光輝。
_A取れた!
_光輝凄い!
_はい、Aにあげる
_ありがとう
_ホクブーのこと、大事にしてね
_ホクブー??
_そのブタの名前
_うん、ホクブー大事にするね!
あの頃からこのブタの名前はホクブーで、家族旅行でもいつも連れて歩いてた。
そうすれば離れていても光輝が近くにいてくれるような気がしたから。
793人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ちゃそ | 作成日時:2019年3月2日 9時