Prince of Vampire 7 (ページ38)

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#Kaito

読めやしない無数の看板。

人種も行き先も分からない通りすがりの人間たち。

深夜、アメリカの広大な土地を駆け巡るのに、俺の脚とスタミナは十分だった。

日本より広い割に、街灯は少なく人通りはまばら。

治安が悪い所でも、俺が恐れる程ではない。

Aが眠る夜、初めての土地を我が物顔に、それか無心に出歩く。

一瞬の風のように突っ走り、見たこともない異文化の中から、ある対象を探す。

本来なら交わるべき存在ではなかった。

だけどこの際、関係ない振りは出来ない。

俺が、というより
俺と顕嵐にとって大事なAが、

友だちとして慕う平野紫耀という存在が
あの日どこに向かったのか。

去った理由は見当がついてはいる。

だけどはっきり見ておきたかった。

昼はAの様子を伺い、

"一人になんなよ"、
なんて過保護な言い付けをする。

Aが大学の真っ最中、一人にならないと踏んだ時や、

皆が寝静まる夜に、

俺はまさに闇に生きる架空の生き物として颯爽と駆け巡るけれど、時間に限界があって、見つかりやしない。

そんな中で、気配で分かる。

日本ではほとんどなかった経験。

それだけ俺は今、これまで走ったことのない距離、面積を走っているんだろう。

気配で存在に気付く、同種、つまりは吸血鬼の存在。

多数隠れて生きている。

見かける度、ほとんどが俺より年上。

スーツを着て、社会に溶け込んでいる。

まるで顕嵐のお父さんのよう。

中には、警察官の吸血鬼もいた。

ありとあらゆるところにネットワークが出来ていて、

"吸血鬼"というのは、もはや闇の世界に潜むものでもないんだな、と。

吸血鬼としてのフィジカルの強さに、

公的機関の権力まで手に入れたら、大変なことになるだろう。

吸血鬼がこの世で一番恐れているのは、不特定多数の人間に見つかること。

吸血鬼であると明るみになること。

そして、大衆によって迫害されること。

だから政治家、公安、マスコミといったパブリックな存在に同種を拡大させることで、

その力を、秘密を保持するための仕組み敷いているのかも知れない。