Prince of Vampire 10

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その後、斗愛をお昼寝させたのか、一度戻ってきた顕嵐。






「……A？」




落ち込む私に近寄る。




「大丈夫だった？Aのこと嫌いとか、別に、斗愛は思ってないと思うよ」




「……大丈夫。子どもだもん。いちいち真に受けたりしないよ」




「そ、ならいいけど」






でも。




「…ねぇ、顕嵐も注意してよ」





「えっ」




「ソファーの汚れ、さっきこすったんだけど、全然取れない」





「新しいの買えばいいじゃん」




「っ、それは…ダメだよ、」




「何で？さっき俺が仕事頑張って買ってくれたとか言ってたけど、別に、俺全然平気だよ？ソファー一個くらい…」




「そういうことじゃないもん」




斗愛には、物の大切さとか、働いてくれることの有り難みを伝えたいのに…。





「…A？」





「…何でも、汚れたり、ダメになったら新しく買い替えるの？顕嵐、そうやって育ったの？」





「俺は割と落書きとかしない子だったみたいだから…」




「じゃあ、私のせいってこと？私の子どもだからってこと？」





「そうじゃないよ。でも、伸び伸びと育てるのも悪くない」




「来年から幼稚園なんだよ？
家ではワガママしても良いけど、よそで壁に落書きしたり、ダメな子に育ったら、顕嵐どうするの？」





「落書きはもうしないよ」





「え？」





「さっき、斗愛に『次は紙に描こうね』って言ったら、分かったって言ってくれた。


クレヨンとかペンで描いた絵は、消えないし、もったいないから消せないってことも話した。


『そしたら、一回しか描けないソファーに描くより、たくさんある紙に描いた方いいよね』って。


それで納得してくれた」




「……」




いつの間に。
そういう言い方してくれたんだ。





「…ダメな子になんかならないよ。


だって、俺はともかくとして、頭の良いAの子だよ？
ちゃんと話せば、分かってくれるよ」




顕嵐の言葉に、何だか胸が押し潰れそうになった。



ありがとうとしか、思わないのに。
なぜか、嬉しくない。



ダメダメって叱ってばかりで、うまくいかない自分が嫌。


ちゃんと向き合って、褒めたり認めたり、したいのに。


嫌いって言われても、私にとっては可愛くて仕方ないのに。




どうして、実際にはうまく伝えられないんだろう。

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