Prince of Vampire 10

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# Sho






「わざわざ送ってくれてありがとうな」






結局Aちゃんの顔を見ただけで何も出来ないまま、あっさりと帰国のタイムリミット。






「ええよ」






空港まで廉が送ってくれるとは思ってもみなかった。






「…明日やっけ？満月なんの」






横から前を向いたまま、呟かれる。






「明後日。向こうの日付やったら明日やけど」






「大変やなほんま」






「他人事やと思うなよ」






「…思ってへんよ、」






廉の声が萎むように小さくなった。
いつも飄々と、良く言えば堂々としている廉が。






「お前は来年やっけ？」






「正確には再来年の1月」






へえ。
意外とちゃんと把握してるんやな。



って、してへんかったのって俺くらいなんやろか。






「…俺の丸２年後やもんな。まだあと１年以上あるな」




良かったやん、って肩をバシッと叩いたら、廉は痛がる素振りを見せた。






「お前ほんまゴリラ、」




「ゴリラちゃうで、オオカミや(笑)」




単なるツッコミのつもりやったけど、




「…なぁ、


ゴリラよりはカッコええと思わん？」




そう俺がつけ加えると、廉はよく分からんような苦い顔をした。






「誕生日が来ていきなりオオカミになるってお前から聞かされたやん。


それなのに自分だけゴリラになってもうてたらって考えたら、俺ちゃんとオオカミになれて良かったわ」




そう言うと、廉は"何言うてんの？"って顔で俺を見つめつつも笑った。









「…あと１年、何しよう。


やりたい事たっくさんあるなぁ。


ながつともっと遊んでおきたいし、Aちゃんとこの子産まれたら、ながつがおじさんになった所、見ときたい」






「勉強もせえよ」




「お前よりはしてるで？ただの遊んでるリア充ちゃうから」




「は(笑)」




「でも彼女は作らん方がええかな？」






珍しくそんなこと俺に聞く。






「…作ってもええんちゃう？期間限定もしくは遠距離なるけど」






「めんどいなぁそれ。俺には向かんかも、」






さっき笑ったかと思えば、また俯く。


でもまた肩を叩いたりはしない。






「…」






そっと心細そうな肩に手を添える。


いつ振りやろ、こんなんコイツにしたん。

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